榊 柚乃との二回目の関わりは、高一のときの体育の授業中。たぶん、文化祭から一週間も経たないくらいの頃だったと思う。

 おれ達男子は体育館の半面を使ってバスケットボールをやっていて、残りの半面で女子がバレーボールをしていた。

 授業の後半で、四つのグループに分かれて試合をすることになって。おれのグループの試合中に、コートのラインをはみ出たボールが女子が授業をしているスペースへと転がっていった。

 たまたま一番近くにいたおれが追いかけていくと、バスケットボールが体育館の壁際に座って見学をしていた女子の足に軽く当たる。その女子が、榊 柚乃だった。


「悪い、榊。それ、こっちに投げてくんない?」

 ちょうどいいや、と思って少し離れたところから声をかけると、顔をあげた榊が少し警戒するような目でおれを見てきた。

 ゆっくりと榊のほうに転がっていったバスケットボールは、彼女に何の危害も加えていない。

 それなのに、こっちを窺うように見てくる榊の表情はやけに強張っていて。おれが悪いことでもしたみたいな、嫌な気分になった。


「そのボール、投げて」

 榊の足元にあるボールを指差してそう言ったら、彼女が慌てたように立ち上がっておれにボールを投げてくる。


「ありがと」

「いえ……」

 受け取ったボールを軽く持ち上げて礼を言うと、榊がおれを警戒するように身をすくめながら他人行儀に会釈した。