彼に誘導されるように歩き出した陽菜が、十歩ほど進んでからわたしを振り返る。
ぼんやりとした輪郭のなかで、真っ黒な陽菜の双眸がやけにはっきりと見える。物言いたげなふたつの瞳を見つめ返して首を傾げると、陽菜がぱっとわたしから顔をそらした。
隣に立つ背の高い男子と一緒に歩いて行く陽菜の耳元で、金色の星のピアスがキラリと光る。
わたしに何も言わずに離れていく陽菜と彼女にくっついて歩く名前不明の男子の後ろ姿は、一見仲が良さそうなのに、うまく言葉にはできない不自然さがあった。
陽菜とあの人、ほんとうに仲良いのかな……。
ふと浮かんだ疑問は、ふたりの後ろ姿が廊下の角を曲がって見えなくなると、少しずつぼやけて消えてしまった。



