いずれにしても、突然あいだに割って入ってきた男子のおかげで、わたしの陽菜に対する戦意が失せた。
陽菜も同じだったのか、勢いを失くしてわたしから顔をそらす。陽菜の耳元で、金色の星のピアスがなんだか気まずげに揺れていた。
「話を遮って悪いけど、そろそろ終わりにしてもらっていい? 俺、江藤さんと約束してるから」
陽菜のピアスを無言で見つめていると、名前のわからない男子がわたしに話しかけてくる。
陽菜が男の子と一緒に帰る約束をするなんて……。それも、また珍しい。
この人と陽菜は、仲が良いんだろうか。
彼氏ができたっていう話は聞かされていないから、友達か。それとも、陽菜の好きなひと——?
考えてみたけれど、どれもいまいちピンとこない。
毎日、毎休み時間、陽菜はわたしの教室に来ていたのに、放課後一緒に帰る約束をするような人がいたなんて知らなかった。
状況を飲み込めないままに頷くと、名前不明の彼の唇が楕円形の輪郭のなかにゆっくりと弧を描く。
「ごめんね、榊さん」
そう言って、彼がわたしから引き離すように陽菜の背を押した。



