「……、わかったよ」

 これ以上抵抗しても仕方がないと思ったのか、蒼生くんがため息を吐く。それからわたしを振り向くと「ごめん」と小さな声で申し訳なさそうに謝ってきた。

「やっぱり、先帰ってて。たぶん、時間かかる……」

 うんざりした声でつぶやく蒼生くんに、わたしは首を横に振る。

「蒼生くんが戻ってくるまで待ってる。時間なんてかかんないよ。だって、蒼生くんは何もしてないでしょう」

「…………」

 わたしの言葉に、蒼生くんが動きを止めて黙り込む。

「蒼生くん……?」

「ありがと、信じてくれて。すぐに話しつけてくるから、待ってて」

「うん」

 頷いて笑いかけると、蒼生くんはうつむくようにわたしから顔をそらして、山崎先生のあとを追いかけた。