「ほら、お前らだって否定できないじゃん。だったら、榊のこと責めるのやめろよ。今回の店番だって、忙しかったけど何とか回しきれたんだからもういいじゃん。みんな頑張りました、ってことで」
おれが顔の前でパンッと手を叩くと、女子達三人はまだ少し煮え切らない表情をしたまま榊から離れた。
なんとか収拾ついてよかった。ほっと安心して巻いたタオルの上から頭を掻いていると、榊がつつっとそばに寄ってきた。
「あの、時瀬くん……? ありがとう」
榊が、おれの名前を確かめるようにちょっと語尾上がりに呼んだことを怪訝に思った。
高校生になってからも相変わらず悪目立ちしているおれは、授業中もちょっとしたことで先生から名指しで注意されたり怒られたりしている。
うぬぼれでもなんでもなくて、そんなふうに教室で悪目立ちすることの多いおれの名前を、榊が知らないはずがないと思う。それなのに、おれの名前を確かめるように呼んだ榊の声は、どこか少し不安そうだった。
「いや、別に。あいつらにも言ったけど、榊がそこまで責められるようなことじゃないって思っただけだから」
「……、うん。ありがとう」
もう一度お礼を言った榊は、おれから少し顔をうつむけるようにして微笑んでいた。
普段からおとなしいやつだし、人見知りで恥ずかしがり屋なのかな。
一度目の榊との関りで感じたのは、そんな感想と少しの違和感だった。