蒼生くんの言うとおり、ブレスレットはただの目印じゃなくて、ふたりでおそろいで着けていた大切なものだ。だったら……。

「蒼生くんのブレスレット、わたしも一緒に探す」

 意気込んでそう言うと、蒼生くんがふっと笑った。

「いや、それはムリだろ」

「どうして?」

「どうして、って。おれがブレスレット失くした場所、男子更衣室なんだけど。柚乃も一緒に入ってきて探してくれんの?」

「あ、……」

 蒼生くんに揶揄うような声で訊ねられて、じわじわと頬が熱くなる。一緒に探したかったけど、男子更衣室ならダメだ。

「な、ムリだろ。だから柚乃は先に帰ってて。見つかっても見つからなくても連絡するから」

 蒼生くんがそう言って、立ち去ろうとする。咄嗟に蒼生くんのカバンの紐をつかんで引き留めると、彼が驚いたように肩を揺らして振り返った。

「柚乃?」

「わたし、蒼生くんが探してるあいだ外で待ってる」 

「ありがとう。じゃあ、早く見つけて一緒に帰ろ」

 蒼生くんの口角があがり、彼の纏う空気が柔らかくなる。

「……、うん」

 おそらく笑いかけてくれているであろう蒼生くんに笑顔を返すと、彼がカバンの紐をつかんだままでいるわたしの手をとった。