放課後。陽菜に言われたことを考えてぼんやりしていると、「柚乃」とふいに呼びかけられた。
顔をあげると、目の前に明るい茶髪の男の子が立っている。
確認するように彼の左手首に視線を向けて、ドキッとした。目の前の彼の左手首に、いつもそこにあるはずの青のブレスレットがなかったのだ。
わずかに頬を引き攣らせると、彼が何もついていない左手首を右手で隠すように覆う。その仕草に、胸がドキッと震えた。
今、目の前にいるのは蒼生くんだ。
わたしの名前を呼ぶ声や明るい茶色の髪を見れば、蒼生くんのことを認識できる。毎日会っている。毎日言葉を交わしている。わたしの好きな人だ。間違えない。蒼生くんのことは、間違えたくない。
それなのに、青のブレスレットという絶対的な目印がないだけで、彼が蒼生くんであるという100%の自信が持てなくなってしまう。