「そうだな……。優しいところとか、わたしの事情を理解してくれてお揃いのブレスレットをくれたこととか、かな」

 少し照れながらわたしが真面目に答えたら、陽菜はあまり興味なさそうな声で「ふーん」と頷いた。

「でも、それだったらさ、時瀬くんじゃなくてもよくない?」

 いつになく冷たい陽菜の声に、ドキッとした。「え?」と口を開くわたしに、陽菜が畳みかけるように続ける。

「優しいところとか、ブレスレットをくれたところが好きって結構ざっくりしてない? それだけの条件なら、他の誰にでも当てはまるよ。もし、時瀬くんと同じ目印を付けた似たような背格好の別人が優しく話しかけてきたら、柚乃はその人のことを好きだって思うんじゃない?」

「陽菜は、わたしが蒼生くんのことを好きなのは勘違いだっていいたいの?」

「そうじゃなくて、わたしが言いたいのは、柚乃が好きなのは時瀬くん自身じゃなくて、青のブレスレットっていう目印をつけてくれる優しい男の子なんじゃないの? ってことだよ」

 今日の陽菜の言葉は、トゲトゲしていて意地悪だ。今まで、蒼生くんとのことをここまでキツく責めてくることはなかったのに。

 わたしの蒼生くんの気持ちを根底から否定するような陽菜の言葉に傷付いた。