「じゃあさ、もし時瀬くんが、全く柚乃の好みじゃない、イマイチな顔してたらどうするの?」
「だから、顔の区別がわからないわたしには好みもなにもないんだってば。そもそも、いいとか悪いとかの基準がないんだもん。蒼生くんは、陽菜から見てイマイチな顔なの?」
どんな顔だったとしても、蒼生くんは蒼生くんだ。想像もできない彼の容姿で、わたしの気持ちがブレることはない。
だけど、彼が客観的に見てどんな顔をしているのかは少しくらい気になる。参考までに聞きたいと思って首を傾げると、陽菜が机の上に置いた両手をぎゅっと握った。
「時瀬くんはイマイチっていうより……。ムカつくけど、どっちかって言うとかっこいいよ!」
机をドンッと両拳で叩いた陽菜の声は、なぜかキレ気味だ。
陽菜が不機嫌な理由はよくわからないけど、わたしと蒼生くんとの付き合いを反対している陽菜が、彼のことを「かっこいい」と評価してくれたことはちょっと嬉しい。
「そっか。蒼生くん、かっこいいんだ」
わたしが部分的に捉えることのできる、蒼生くんのややつりあがった眉や目。凛々しく精悍に見える彼の顔の一部分を思い浮かべると、ようやくいちごミルクのストローに口をつける。
吸い上げたいちごミルクの甘さが舌の上を滑って全体に広がっていくのを感じながらニヤニヤしていると、陽菜が不機嫌そうに眉根を寄せた。