「なぁ、もう終わったことをしつこく責めなくてもいいんじゃない?」
榊を取り囲む女子たちに声をかけると、三人が同時に「はぁ?」という顔でおれのほうを振り向いた。
「何言ってんの、時瀬。こっちは榊さんのせいで、お客さんから怒られたり、フォローしなきゃいけなかったりで大変だったんだよ」
「そうだよ。榊さんにはちゃんと謝ってもらわないと気が済まない」
榊を庇ったことで、女子たちの彼女に対する怒りや不満が、一気に全部おれに向かって降りかかってくる。
すぐに、これはマズったなって怯みかけたけど、女子達の輪の真ん中で下を向いていた榊が、ちらっとこちらに縋るような視線を向けてきたから、おれは引くに引けなくなった。
助けに入っといて逃げるなんて、そんなかっこ悪いことできない。
店番中に汗が垂れないように頭に巻いていた白いタオルが額に少し下がってきて、それをぎゅっと押し上げながら三人の女子達に対峙する。
「そうは言ってもさ、何かを初めてやるときって緊張したり勝手がわからなかったりして、失敗するときあるじゃん。お前らはそうやって榊ばっかり責めてるけど、一時間の店番のあいだに一個も失敗なかったの? おれはあったよ。焼きそば調理してるときに、ソースがどばって大量に出ちゃって、何個か濃すぎる焼きそば出しちゃったと思う」
おれが店番中の失敗をひとつ白状すると、怖い顔をしていた女子達三人がそれぞれ少し気まずそうに視線を泳がせ始めた。
榊のことをひどく責めてるこいつらだって、きっと完璧に仕事をこなせていたわけじゃない。