「そろそろ、時瀬くんと別れそう?」
昼休み。わたしのところにやって来た江藤 陽菜が、唐突にそんなことを聞いてきた。
「別れないよ」
笑って首を横に振ると、陽菜が「なんでー!」と不満そうに唸る。ゆるく握った拳をトンッとわたしの机に落とす陽菜の耳で、金色の星のピアスがキラキラと揺れた。
「一ヶ月も付き合ったんだし、柚乃も時瀬くんも、そろそろお互いに飽きる頃じゃない?」
「そんなふうには思わないけど……」
飽きるどころか、蒼生くんといる過ごす時間が増える度、彼の好きなところも増えていく。お互いに名前で呼び合うようになってからは、蒼生くんとの距離がさらに近付いた気がする。
わたしの名前を呼ぶ蒼生くんの声を思い出すだけで、ニヤリと口角が上がってしまう。
「柚乃、なんかニヤけてる……」
不機嫌そうにキリキリと歯を鳴らす陽菜の耳元で、金色の星のピアスがさっきよりも激しくキラキラ揺れた。