だたでさえオーダーが殺到してそれをさばくだけでも大変なのに、榊がオーダーとは全然違う個数の焼きそばを客に渡したり、お釣りを待っている客に別の客が頼んでいた割り箸を渡したり、そのことで外部から来てくれていたお客さんを怒らせたり……。
とにかくいろんなドジをやらかして、一緒にシフトに入っているメンバーの手を煩わせ、無駄な仕事を増やしまくった。
一時間の店番が終わると、おれたちのグループのメンバーは忙しさと榊のフォローでクタクタになっていて。特に榊以外の女子メンバーは全員、目尻をつりあげて怒っていた。
これは一悶着ありそうだなと様子を窺っていたら、案の定。次の時間のシフトメンバーと店番を交替したあと、榊は焼きそば屋のテントの裏で、グループのなかでも気の強そうな女子三人に取り囲まれた。
文化祭委員がデザインしてクラス全員で揃えたオリジナルの黒Tシャツを着て、怖い顔で腕組みする三人の女子達。その輪の真ん中で、彼女たちとお揃いの黒Tシャツの裾をつかんだ榊が、申し訳なさそうにうつむいていた。
「榊さん、真面目にやる気あった?」
「最初っから最後まで、あたし達の邪魔にしかなってなかったよね」
「ただでさえランチタイムで忙しいのに、榊さんのせいで大変だったんだけど」
女子達に責められて、だんだんと猫みたいに背中を丸めて縮こまっていく榊。遠くから眺めていたおれは、なんだか榊が気の毒に思えてきた。
たしかに榊の仕事ぶりは酷かった。だけど、たかが文化祭の、たったの一時間の店番の失敗を寄ってたかって責める必要もないと思う。