「その企業は宇佐美不動産で、その企業のご令嬢が自分と結婚したいと言ってきました、でもそのご令嬢との結婚にノーと答えると、当時結婚したいと考えていた女性に嘘の情報を伝え、自分のマンションから追い出し、会社も辞める様に促しました、自分は卑怯な手を使って自分と彼女を引き裂こうと企んだことが許せなくて、一方的に契約を破棄しました」

「桂木くんが怒るのも無理はないな、その女性とは誤解が解けたのかな」

「はい、でもいつも自分のことを気遣ってくれて、今回も身を引くと言い張って、説得するのに大変でした」

「今時珍しい女性がいるんだね」

「そうですね、そこに惹かれたんですが、あと、その女性の涙にも惹かれました」

「そう言えば十年位前にわしは、妻に先立たれて、その時知り合った娘さんに助けられた、その娘さんは男性が信じられないと嘆いていた」

「その娘さんとはどうなったんですか」

俺はみゆと重ね合わせていた。

「しばらく一緒に居てくれたおかげで、わしは妻を失った悲しみを克服出来た、だが彼女を幸せにするだけの若さがなかったからな、縁がなかったってことだな」

「そうだったんですか」

「当時桂木ホテルリゾートに勤めていたんだが、まだいるかな」

「えっ?名前は?」

「立木みゆちゃんじゃ」

俺はみゆの名前が出た事にビックリして狼狽えた。

「あの、立木みゆは自分の結婚相手です」