「ああ、頑張ってくれてるよ」

「そうですか、皆に迷惑かけてしまって、心苦しいです」

「俺がもっとみゆに気遣い出来てれば、すまない」

「錑はわる……すみません、桂木さんは悪くないです」

「いいよ、錑で……俺もみゆって呼んでるし」

「でも……」

「みゆ」

錑と私は見つめ合った。
愛し合った時が走馬灯のように脳裏に蘇る。
どちらともなく、二人の距離は近づき、唇があと数センチのところで「みゆちゃん」と北山先生が私を呼ぶ声が聞こえた。

ビクッと身体が反応し、我にかえった。
「はい」と返事をして病室を後にした。

私、今何を……手の震えが止まらない。

「みゆちゃん、どうした?」

私の手の震えに気づいて北山先生は私の手を握ってくれた。

「大丈夫?ごめん、僕がみゆちゃんに頼り過ぎたかな?」

「大丈夫です」

その頃錑も我にかえり自分が何をしようとしていたか考えると、理性を抑えきれない自分にゾッとした。
このままだとみゆを抱きたいと言う衝動に勝てない自分が現れるのも時間の問題と感じた。