「ちょっと桂木くん、私はそんな事言ってないけど」

「そう?お前らお似合いだから付き合っちゃえよ」

村山慎一、私は彼と付き合うことにした。

自分の気持ちを全く相手に伝えられない彼と、ズバズバ自分の気持ちを相手に伝える私。

一度も好きって言われた事はなかった。

それでも、いつも優しく私を気遣ってくれた彼。

私は日に日に惹かれていった。

それからしばらくして、彼は具合が悪くなり、仕事を休むようになった。

彼は血液の癌に侵されていた。

貧血と甘くみたのがいけなかったと悔やんだ。

「錑はいつも私の側にいてくれたけど、私達は恋に発展しなかったの、全くタイプじゃないから」

「そうだったんですか、全然知らないのに変なこと言っちゃってすみません」

「ああ、いいの、私と錑ってそんな風に見られてたんだ」

私はなんて辛いことを聞いてしまったんだろうと後悔した。

「ゆかりさん、ごめんなさい、私……」

「大丈夫よ、だから立木さんにはちゃんと検査受けてほしいの」

「考えておきます」