それからしばらくして東京から私を訪ねてきた人がいた。

「やっと着いた、立木さん、貧血は大丈夫?」

ゆかりさんだった。

「ゆかりさん?」

「姉さん、僕に任せてって言ったよね?」

「だって錑が行くって訊かないから、宥めるのに大変だったのよ」

「先生、私がここにいること黙って居てくださいってお願いしましたよね?」

「すみません、でも僕が教えなくても、錑はきっとここを捜し出しますよ」

「ちょっと、私の存在忘れてない?」

「ごめん、姉さん久しぶり」

「何?相変わらず一人?」

北山先生は、ゆかりさんの言葉に呆れた様子の表情を見せた。

「さあ、立木さん、じっくり聞かせてもらうわよ、なんで錑の元を去ったの?しかも会社まで辞めて」

「私が錑に相応しくないからです」

「相応しくない?」

「桂木ホテルリゾート株式会社の社長なんですよ、錑は……しかも麗子さんと言う婚約者まで居て」

「錑は麗子さんとは結婚しないって言ってたけど」