ゆかりさんは与那国島に向かった。
私は北山先生が処方してくれた薬で、貧血の症状はだいぶ治ってきた。

「先生、大変お世話になりました、会計をお願いします」

「あのう、また一人の時貧血症状が出ると大変ですから、ここにもうしばらくいてください」

「でも、これ以上北山先生にご迷惑をかけられません」

「迷惑だなんて、立木さんと一緒にいると楽しいんです」

北山先生は恥ずかしそうに下を向いた。

「疲れない程度なら、働いた方がいいと思うので診療所の手伝いをして頂けないでしょうか」

「でも、診療所のお仕事は経験がありません」

「大丈夫です、簡単な仕事なら資格いらないので、どうでしょうか」

私はしばらく考えていた。

「ここにいて、嫌なことは忘れた方がいい、立木さんの側にいる男性は僕じゃ駄目ですか」

「ありがとうございます、北山先生は優しいんですね、誰にでも優しくすると彼女さん悲しみますよ」

「残念ながら彼女はいません、男として魅力無いんですかね」

「そんなことありませんよ、北山先生は魅力的ですよ、でも私は……先生の側にいる女ではありません」

その時診療所のドアが開き、「すみません」と男性の声がした。

北山先生と入り口に向う。

「みゆ、捜したよ」

そこに立っていたのは龍司だった。