そこへ宇佐美不動産のご令嬢宇佐美麗子さんが、錑を訪ねて来た。

「社長、宇佐美不動産のご令嬢宇佐美麗子様がお見えになりました」

「じゃ、また連絡するから」

ゆかりさんと入れ違いに、麗子さんが社長室に入って来た。

「錑様、父が結婚の話を早く進めるようにと急かすものですから、今日伺いました」

「誰と誰の結婚話ですか」

「もちろん、錑様とわたくしのです」

「ちょうど良かった、今回の御社と弊社の契約は無かったことにしていただきます」

「どう言う事ですの」

「ご自分の胸に手を当てて、よく考えてみてください」

「立木さんの事でしたら、わたくしは間違っているとは思いませんわ」

「そうですか、では宇佐美不動産ご令嬢と俺とは考え方が違うと言う事で、お引き取りください」

「錑様、酷いです、錑様は存在が罪なんです、ですから、錑様からの優しい言葉を愛と勘違いしてしまいます、わたくしは立木さんに教えてあげただけですわ」

「俺のみゆに対する言葉は、全て愛だ」

「でしたらその愛に応えてくれなかったって事ですよね、立木さんは錑様の元を去っていかれた女性ですのよ」

「俺無しでは、生きていけない位に惚れさせて見せる、俺がみゆ無しの人生は考えられないようにな」

「錑様」

「俺がご令嬢にかけた言葉を愛と勘違いさせたなら謝る、すまなかった」

「錑様、わたくしは諦めませんから」

麗子さんは社長室を後にした。