二階堂くんは渋々総務部に戻った。

その頃、私は東京を離れていた。
貯金を全部おろして、気ままな一人旅。
そうだ、龍司に連絡してない、アパートに居なくて心配してるかな?

そう、龍司はみゆがアパートを引き払ったことに動揺を隠せず、みゆを捜していた。
そして錑のマンションにたどり着いた。

「すみません、ちょっとお尋ねしますが、こちらに桂木錑さんはお住まいでしょうか」

「失礼ですが、どちら様でしょうか?個人情報なのでお答え出来かねますが……」

「橘不動産社長の橘 龍司と申します、みゆ、いえ、立木みゆさんを捜しています、桂木さんのマンションにお住まいと伺ったのですが……」

コンシェルジュの横尾さんに名刺を渡した。

「桂木様はお住まいです、しかし出張中のため留守にしております、みゆ様の事は桂木様に伺ってからでないと、お答え出来かねます」

「そうですか、わかりました、いつお戻りでしょうか」

「一週間ほどで戻るとお聞きしております」

「ありがとうございました、また出直して来ます」

龍司は錑のマンションを後にした。

今夜私がスマホに出なかったら、錑は心配するだろうな。
でももう錑とは会わないんだから、連絡取れない方がいいよね。
錑、錑、錑に会えないと寂しくて死んじゃう、涙が溢れて止まらなかった。

その夜、俺はスマホを手に取り、みゆに電話をかけた。
しかし何回コールしてもみゆは出ない、そのうち留守電に切り替わる。