「この間わしは与那国島へみゆに会いに行った」

「えっ?与那国島に?」

「ああ、久しぶりにみゆと再会して、心が昂ったよ、年甲斐もなくお恥ずかしい話だが」

「いえ、わかります」

「みゆにどうして十年前に姿を消したのかと聞かれて、本当の気持ちを伝えた、こんな年寄りの側にいる事がみゆに取って幸せだと思えなかったと……」

俺は黙って聞いていた。

「みゆは好きな人と一緒にいる事が幸せだと、楽しいことばかりではないのは承知している、でも一緒にいる事が出来れば苦労や悲しみは半分になると、実はみゆに助けてあげて欲しいと頼まれた、自分も働いて一緒に返すからと……」

「みゆがそんなことを……」

「桂木くんが会社を立て直す事が出来れば、みゆを迎えにくる、だからそれまで待つようにとわしが言ったんだ、みゆは桂木くんを持っているんだぞ」

俺は自分がどれだけ傷つくことを恐れている小さい人間か思い知らされた。

みゆを離したくないと決意を新たにした。

俺はみゆの元に直行した。

みゆ、待っていてくれ、俺はお前を愛している。

「健志、みゆを迎えに来た、みゆはどこだ」

「錑、遅いよ、今まで何をやっていたんだ」

「悪い、みゆを迎えに来る事に躊躇していた、みゆは?」