「彼からみゆちゃんが結婚相手だと聞いてビックリしたよ」

私は俯いて慎太郎さんの話を聞いていた。
「桂木ホテルリゾートが倒産の危機を迎えてしまった、彼は自分の力が及ばず、社員に迷惑をかけたと項垂れていた、宇佐美不動産のご令嬢の事も聞いた、決して彼は間違ってはいなかったと思うよ、みゆちゃんと結婚したい気持ちに嘘偽りがないって証拠だからな」

「でも、私のせいで錑、いえ社長を苦しめてしまって、申し訳ないです」

「男はいつでも愛する女のために、苦労するように出来ているんだ、わしだってもう少し若かったら、あの時みゆちゃんと生きる道を選んでいた」

私は慎太郎さんの口から真実が語られた事に驚きを隠せなかった。

「慎太郎さんがあの時私の前から姿を消したのは、私の事を思っての行動だったんですか?」

慎太郎さんは恥ずかしそうに俯いた。

「私は側にいて欲しかったです、てっきり嫌われたんだと思っていました、だからすごく悲しくて寂しくて、大変な思いをする事になっても、大好きな人と一緒にいたいです」


「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ、それなら桂木くんの気持ちがわかるだろう?大変な思いをしても、大好きな人と一緒にいたいと、彼も思っているよ」

私は慎太郎に言われた言葉にハッと気づいて、涙が溢れて来た。

「みゆちゃん、実はな、桂木くんからみゆちゃんと結婚したいと言う意思があると聞いて条件を出した、みゆちゃんと結婚して生涯愛すると誓うことが出来るなら、わしの会社のグループ会社になる事を進めた、そうすれば心配する事は何もないからね」

「そんな約束があったなんて知りませんでした、なんで錑は話してくれなかったんでしょうか」