「健志、俺だけど、みゆは大丈夫か?」

「錑、みゆちゃんはそっちに行っていると思うんだが、お前のところじゃないか」

「みゆが東京に?」

「ああ、すまん、ちょっと目を離した隙に姿が見えなくなった」

俺は嫌な思いが脳裏を掠めた。

「橘不動産の社長が来て、錑の会社が倒産寸前の事やそれが宇佐美不動産ご令嬢との結婚を断った為だとか、良からぬ噂を吹き込んだんだ」

「それで、自分のせいだと責めているのか」

「ああ」

みゆはいつでも俺の事を考える女だ。

だが今回だけはみゆが俺の側にいることが会社の存続に大きく影響する。

みゆはその事実を知らない。

「わかった、こっちでみゆを捜すよ」

「ああ、みゆちゃんをよろしく頼むよ」

俺は急いでみゆの行方を捜した。

その頃、みゆは麗子の元を訪ねていた。

宇佐美不動産本社を訪ね、麗子とのアポを取った。

「あら、みゆさん、お久しぶりですわね」

「桂木ホテルリゾートの噂をご存知ですよね」