2.
朝、目が覚めるとベッドの上にいた。
「あれ……私、昨日……」
夜何してたんだっけ……。
起きたばかりで回らない頭を動かす。
「あっ」
そうだ。昨日の夜公園で泣いてて、そして“滉晴”って人に会って……。
あれ……覚えてない。私はどうやって家に帰ってきたんだ!?
──バッターン!!!!!!
その時、部屋のドアを思い切り蹴飛ばす音が響いた。
「っ!?」
「ひぃまりいいいいい!!!!あんた昨日夜何してたぁぁあああああ!!!!」
現在大学1年の姉、栗栖美冬(くりす みと)だった。見た目はかわいいくせに中身が野蛮な人だ。
「え!?いや……別に何も……って、何で!?」
言えない言えない。男といたなんて。それも知らない人と。
「昨日あんたの帰りがあまりにも遅かったから心配して外出てったら玄関先で寝てたの!覚えてないの!?」
玄関先!?私が……?酔っ払いのオヤジか。
「何で!?」
「そんなのこっちが聞きたいわ!今度こんなことあったらあんたの分のこづかいもらうからな!」
こづかいって……ガキかよ。
思う存分叫んだ姉は部屋を出て行こうとする。
すると姉は足を止め、背を向けたまま小さくつぶやいた。
「今日は……行くの?」
「……」
「別にいんだけどさ、あんたの事だし。でもいつまでも閉じこもってんのもつまんないでしょ。
たまには顔だしてやんな。友達心配してるよ」
「……いいよ」
「そう……」
それだけ言って姉は部屋を出ていった。
しばらくベッドの上に座っていた。ふと時計を見ると丁度お昼の時間。今日は平日。普通だったら今頃私は友達と楽しく弁当を食べているだろう。
そんな光景が目に浮かぶ。
そう、私は今……不登校なのだ。
「暇だなぁ……」
学校に行かないってほんと暇。でも行けばもっと暇。
そう思いながら制服に着替える。
「出かけるか」
学校に行くわけでもないのに制服に着替えるのは、この方が落ち着くから。私服よりも制服の方がかわいいし。
そして私はカバンを持って玄関を飛び出した。
しばらく歩いてるけど何も変わらない毎日。
暇すぎる。
その時ふと滉晴を思い出した。
結局彼のことが分からないまま昨日は終わってしまった。知ってることと言えば滉晴という名前と同じ高校ということだけ。
でもなぜだろう。彼に会いたくてしょうがない。でも、今頃滉晴は学校で授業を受けているだろう。私が不登校だなんて知らない。
今日も公園に行けば会えるかな……。
そんな考えが浮かんで、気がつけば足が勝手に動いていた。