遊具の屋根の上に登ると、桜の花びらが私についてくるかのように舞い上がってきた。
こんなに桜がキレイなのに、不思議に思うほど公園には誰もいなかった。

「滉ちゃん、私1人でここまで登れたよ」

あの日から毎日公園に通い、天気のいい日は遊具を登って屋根の上で星を見た。気づいたら登れるようになっていたのだ。

「見て、滉ちゃん。私ね、留年することなく恭子たちと卒業することができたんだよ」

そう言って空に向かって卒業証書をかざす。

「あとね、さっき泰貴くんに会ったの。滉ちゃんによろしくだって。彼女もできたんだって言ってたよ!」

周りから見れば変に見えるかもしれないけど、私にとっては大事なこと。
私は手をつくと、文字の彫られてるところに触れた。再び滉ちゃんによって彫られた文を読む。

文字の後を指でなぞる。

「滉ちゃん……」

私はその場に寝転がった。
2年前の時みたいに、腕枕をしてくれる彼はもう隣にはいない。私に“絶対に守るから”と言ってくれた彼はもういない。

いないけど、ここにいる。
滉ちゃんはずっと、ここで待ってくれてる。


ここへ来て、たくさんの青空を、星空を見上げてきました。

あなたが見つけ出したこの場所で。

そして私はいくつもの涙を流してきました。

あなたを想って流したその涙は、私を強くさせてくれました。





「ありがとう、滉ちゃん」


私は小さく、そう呟いた。





Fin.