「あ、私、ちょっと用事あるからまた後で!」

私は2人にそう告げると、背を向け走り出す。
2人は私の“用事”の意味が分かると笑顔で送り出してくれた。

「遅くなりすぎるなよー!」
「うん!」


走りだしたものの、私はすぐ歩き出した。
“危ない”から。それは小さい子でも分かること。

卒業証書を入れた筒を片手にあの場所へと向かう。



「……栗栖さん?」

後ろから誰かに呼ばれた。聞き覚えのある声。
後ろを振り返るとそこには懐かしい人物がいた。

「泰貴くん!」

滉ちゃんと仲の良かった、滉ちゃんがいつも自慢してた友達。

泰貴くんとは滉ちゃんを通して数回話したことある程度だった。
滉ちゃんがいなくなってからは、一度も話したことがない。廊下ですれ違うことさえあまりなかった。

「どうしたの?泰貴くん」
「そこを友達と通ってたら栗栖さんが見えたから……今日で卒業するし、最後だからあいさつでもしておこうかと思って」
「そっか」
「栗栖さんは帰り道?」
「ううん、……今から滉ちゃんに会いに行くの」

それを聞いた時、泰貴くんは一瞬驚いた顔を見せたけれど、また優しい表情に戻ると言った。

「そうなんだ……。じゃあ、俺の分もよろしく言っといてくれよ」
「うん、分かった!じゃあ行くね」
「じゃあな」

私は再び歩き出した。

「あ!あと、俺にも彼女ができたって言っといてくれー!」

私は後ろを振り返ると分かったと言い、付け足しておめでとうと叫んだ。泰貴くんはありがとうと叫ぶ。

彼女さんを幸せにしてあげてね。