正直、悩みなんてものじゃない。
自分でもわからないんだ。


「彼氏に振られたの」

嘘。まったくの嘘です。

「……へぇ」
「何?“へぇ”って」
「いや、以外だなぁと思って。陽葵ちゃんかわいいのに振るやつなんているんだ」
「はぁ……」

言えない。もう後戻りはできない。嘘でしたなんて言えない。
悪気は全くないんだけど。


「最低だな。その男」

さっきまで明るい口調とは違い、滉晴は真剣な表情になった。輝いてた瞳も、今は真っ黒。
滉晴は続けて言った。

「あんたを1人にするなんて」

その言葉の裏にどんな意味があるのかは分からない。
でもその発した声からは怒りや悲しみのこもったようにも聞こえた。


「……なーんて!びっくりした?」

私は驚いた表情のまま滉晴を見つめていた。

「そんな怖い顔しないでって。ジョーダンだよ」
「怖い顔してたのはどっちよ」

そう言いつつも、まだ滉晴から目が離せない自分がいる。

滉晴は笑ってる。
その滉晴の目をよく見ると、ひどく腫れていた。滉晴も私と会う前、あの遊具の屋根の上で泣いていたのだろうか。星を見ながら。

それは何の涙?誰のために流した涙?
知りたい。滉晴の事をもっと知りたい。

「でも失恋わさ、自分を強くするものだと思うよ」



なぜだろう、初めて会った人なのに。
誰かに似ているんだろうか、滉晴と話していると懐かしい感じがする。

だから、私はこの短時間で滉晴の事をもっと知りたくなってきた。


滉晴への質問が頭の中を巡る。
聞きたい事が、たくさんあるんだ。