「……1人じゃないよ」
「え?」
「陽葵は1人じゃないよ。友達がいる、家族がいる。陽葵は今まで1人で生きてきたわけじゃないだろ?姿は見えなくても、俺もずっと、そばにいるよ」

空を見上げたままそう言った滉ちゃんに、私は思わず涙が出そうになった。

「……ぐすっ」
「泣かない!ほんと陽葵は泣き虫だなぁ」

笑いながら滉ちゃんは自分の袖で涙を拭いてくれた。

「滉ちゃんの前ではそんなに泣いたことないもん!」
「俺がいなくなってからどんだけ泣いたんだよ」
「そっ、それは……」

……図星です。そんな縮こまる私を見て滉ちゃんは再び笑う。

滉ちゃんはこうして今目の前で笑っているのに。こんなに近くにいるのに。
滉ちゃんはもう……いっちゃうんだよね?

そう思うと胸が強く締め付けられた。
滉ちゃんにべったりとくっつく。

「どうした?」
「……」

言いたくない。言えない。
“最後だから”……なんて。

滉ちゃんは私の暗い顔を見て安心させようとしたのか、私の手をとり重ねると指を絡ませた。

空を見上げる。
するといろんな感情が溢れ出して、それが涙となって頬を流れた。
慌てて下を向き、顔を隠す。……泣いてばかりだ。

滉ちゃんはもう何も言うことはなかった。代わりに握っていた手を離し、私の方に向き直ると優しく抱きしめてくれた。


「……っ、滉ちゃん……いなくならないでっ!!」

違う……滉ちゃんはいかないといけないのに。
分かっていながらも逆の事を口にしてしまう。

ううん、本当はずっとこのままで、そばにいてほしい。本当は滉ちゃんがいなくなるなんて考えるとすごく寂しい。

泣きながら滉ちゃんの服を掴む。
滉ちゃんは黙ったまま。


「ずっと……そばにいてよ」

無茶な事を言ってるのは分かってる。

でも……──