8.
……全部……思い出した。
地べたに座り込んでた私は立ち上がり、恭子と麻美を背に向け走り出した。
恭子、麻美……ごめんね。ありがとう!!
そう心で言うと私は自分の家に向かった。
自分の部屋に戻ると、ドアの横にかかってた学ランを手にとり再び家を飛び出す。
するとそこでお姉ちゃんと出くわした。
「陽葵!ちょ……学ランなんか持ってどこ行くの!?てかそれ誰のよ!」
「滉ちゃんのだよ。今から滉ちゃんに返しに行くの!」
「滉ちゃんって……滉晴くんのこと?でもあんた、思いだしたの?」
「うん。だから、私、滉ちゃんに会わないと行けないの!言いたい事がたくさんあるから!!」
「陽葵、あんた分かってるでしょ?滉晴くんは……」
「うん分かってる。分かってるよ。でもね?お姉ちゃん、私、記憶なくしてる間、滉ちゃんと会ったんだよ?話したんだよ?この前私を家に送ってくれたのも滉ちゃんなんだよ?」
「陽葵……」
「ありえないって、おかしいって思ってるかもしれない。でも私、滉ちゃんといたの!だから私、今から滉ちゃんと本当にさよならしに行かないといけないの!」
お姉ちゃんは私の肩を掴むと目を合わせて言った。
「うん……分かったよ。だったらちゃんと滉晴くんに自分の思ってること、全部ぶつけてこい!」
お姉ちゃんの言葉に、涙が出そうだった。
「……うん。ありがとうお姉ちゃん!行って来る!」
「行ってこい!それでこそ我が妹だ!」
ありがとう、お姉ちゃん。
お姉ちゃんは私が学校行かなくなった日から、私が記憶が喪失してることを知ってたんだ。
だから滉ちゃんの事は言わなかったし、無理矢理学校に行かせることもなかった。
お姉ちゃんは、私の事を分かっててくれたんだ。
お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで本当に良かったよ。
そして私はある場所へと走り出す。