……頭が……痛い。
ズキズキする、ずっと。
私は公園のベンチで夜空を眺めていた。
空一面に広がる星は何もなかったかのように今日もキレイに輝く。
私の手には滉ちゃんと一緒に食べるはずだったコンビニの袋が握られている。
そして私の頭には包帯が巻かれていた。
……滉ちゃんと見るはずだった夜空。
滉ちゃんはもう、いない。
この日、滉ちゃんは事故で死んだ。私のせいで。
私が道路に飛び出したから。滉ちゃんは“危ない”って言ったのに。私をかばって滉ちゃんは死んだ。
……ねぇ、滉ちゃん。今日は空が何だか遠く感じるの。
私、登るの下手だから、1人じゃ登れなくて。
滉ちゃんの手助けがないと登れないの。
だから、もうあの屋根の上に登ることはないんだ。もう、あの場所で、2人だけの場所で、空を見ることはないんだ。
涙が、私の頬を伝って下に落ちていく。
1週間くらい学校を休んだ。頭はまだ痛い。
でも恭子たちが心配してるから、私は1週間ぶりに学校に行った。
今日から、滉ちゃんのいない学校。
教室に入れば、みんなの目線が私に向く。
「カワイソウ」
「アンナラブラブダッタノニ」
「ジュギョウサボッタリスルカラ」
いろんな声が聞こえてくる。でも不思議と気にならなかった。
恭子と麻美はずっと私のそばにいてくれた。
無理して盛り上げるわけでも、気を使うわけでもなく、ただそばにいてくれた。
その優しさに、何度か泣きそうになった。
でも……
帰る時間になっても、いつもの私の名前を呼ぶ声は聞こえなくて。廊下から聞こえてた優しい声はもうどこにもなかった。
心にポッカリと穴が開いた。
もう埋まることのない、大きな穴。
私は“大切な人”を失った。
頭が……痛い……。
──……
─……
朝7時。
ふと目を覚ましてしまった。いつもなら学校に行く時間。
「こんな時間かぁ……」
頭では分かっていても、体が動かない。
「もう学校とか行きたくないなぁ……」
だるくなってきた。よく分からないけど、学校に行きたくない。
何かが無い気がして。
「うぅ……頭痛い……何で痛いんだっけ?……まぁ、いっか」
制服に着替えるけど、学校には行かない。
この日から私は滉ちゃんの存在を忘れ、学校に行かなくなった。
理由は分からないが、悲しくなって泣きたくなると、あの公園に自然と足が向かう。
そして私は公園で1人、泣くようになった。