滉ちゃんと付き合って1ヶ月。桜も消えた頃。
この日も授業をサボり、学校を抜け出した。
少し熱くなってきたので、アイスを買ってから公園に行こうとの事だった。

コンビニで自分の大好きなアイスを選ぶ。
そして買った後、私は早くあの場所で空を見たかったから走り出したんだ。
滉ちゃんが後から追う。

「滉ちゃん早く!アイス溶けちゃうよ!」
「そんな急ぐなって!危ないだろ!」

滉ちゃんはいつの間にか“危ない”が口癖になってた。そんな事も気にせず私は走り続ける。

すると道路が目の前にあった。そこは全くと言っていいほど自動車が通らない。それを知ってた私はそのまま道路に飛び出した。


「陽葵!!!!」

後ろから滉ちゃんが叫ぶ。さすがに早すぎたかなと思い、滉ちゃんの方を振り向こうとした時だった。
私を包む大きな影が目の前に現れ、足が動かなかった。

「え……?」





……頭が痛い。ズキズキする。
目を覚ました私の前にはトラックがあった。トラックは止まっている。
私はこのトラックにひかれそうになったんだ。そう判断した。

ここに私がいるって事は助かったって事?私……生きてる?

……滉ちゃんは?
そう思い、地面に手をついて立ち上がろうとした時だった。
手に何かがついた。ベタッとした何かが。何かと思い自分の手を見ると、自分の手には真っ赤な血がびっしりとついていた。

「何……これ……」

誰かの悲鳴が聞こえた。その悲鳴によって人が集まってくる。

「……滉ちゃん?」

目の前にはぐったりと倒れた滉ちゃんの姿があって、滉ちゃんの下には血が広がっていた。


「救急車呼べ!救急車!!」

誰かがそう叫ぶ。

「ねぇ……滉ちゃん」

私は滉ちゃんのもとへゆっくりと近づいていく。
滉ちゃんの着てたカッターシャツは真っ赤でも、滉ちゃんの顔には汚れ1つなかった。

私がいくら滉ちゃんの名前を呼んでも、滉ちゃんは目をつぶったまま。

「滉ちゃんてば、そんな演技やめてよ」

キレイだった滉ちゃんの顔は、私の手によって頬が赤くなる。それでも滉ちゃんは目を開けない。

滉ちゃんの頬に、一粒の涙が落ちる。


サイレン音が聞こえてきた。

「……滉、ちゃん……滉ちゃん!」

サイレン音と泣き声だけが響いた。