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「陽葵、こっちこっち!」
「滉ちゃんどこ行くの?」

その日も授業をサボり、2人は公園にいた。
滉ちゃんは遊具を登っている。

「そんな上までいったら危ないって!」
「大丈夫だよ、ほら」

登りが下手な私に手を差し伸べる滉ちゃん。私はその手を掴む。そして遊具の屋根の上についた。下を覗くと……けっこう高い。

「陽葵、見てみろよ」

そう言って空を見る滉ちゃんにつられて私も空を見る。

「わぁ……」

そこには雲1つない青空が広がっていた。

「キレイ、青い!」
「だろ?少し空に近づけた感じするだろ?」
「でも、学校の屋上の方が高くない?そっちの方が空に近いじゃん」
「学校の屋上なんてみんな知ってんじゃん。ここは俺たちだけの、空に1番近い場所だよ」

滉ちゃんはどうだと言った感じの満面の笑顔を私に見せてくれた。そんな滉ちゃんがとてもかわいらしかった。

「こんな高い屋根の上なんて誰もこないし、俺たちだけのとっておきの場所だよ。もし悲しくなったり何かあった時は、2人でこの場所で空を見上げて全部忘れるんだよ」

滉ちゃんが私の手を握る。

「うん!!」

屋根の上に寝転がってみると、屋根は思ってたよりも広かった。

「落ちるなよ」
「滉ちゃんが守ってくれるから大丈夫!」
「しょうがないなぁ」

そのまま私は眠りについてしまった。








「……まり、陽葵!起きろ!」

滉ちゃんが私の肩を揺らす。

「ん……もう朝?」
「何ばかなこと言ってんだよ、もう夜だよ」
「え?」

夜という言葉に目を覚ますと太陽の眩しい光はなく、辺りは真っ暗だった。
……私、今までずっと寝てた!?

「ごめん、滉ちゃん!」
「すごい気持ちよさそうに寝てるから起こそうか迷ったけど……もう夜だと思って」

滉ちゃんは笑いながら言う。……恥ずかしい。

「それより、ほら」

滉ちゃんが上を指差す。今度はなんだと思いまた空を見上げる。

……息を呑んだ。
そこには暗闇の中、いくつもの小さい光が浮かんでいた。……星だ。

「キレイ、キレイキレイー!すごいすごい!!」

興奮する私を見て滉ちゃんは言う。

「夜になれば星も見れる。最高じゃねぇか?」
「うん!うん!すごくいい!最高だよ滉ちゃん!連れて来てくれてありがとー!」

滉ちゃんに飛びつく。勢いで滉ちゃんは後ろに倒れた。

「落ちるって、危ないだろ」
「ごめんごめん」

その夜は滉ちゃんと寄り添い、ずっと星を眺めていた。



そんな幸せな日々が何日も続いた。

これからも幸せな日々が毎日続いていくだろうと
思っていたのに……──