ある日の事だった。日直で仕事が遅くなり、帰りの下駄箱でくつに履き替えようとしてた時だった。奥の下駄箱の方で話し声が聞こえた。声の場所からして、隣の2年の下駄箱からだった。

「俺さぁ、欲しいのがあんだけど」
「……前にも欲しいとかいって、あげたばっかじゃん」

この声は……陽葵ちゃん?じゃあもう1人の男の声は彼氏?

「また欲しいのがあったんだって!お願いだよ陽葵~」
「うん……分かった」

かばんを開ける音が聞こえる。おそらく金を出してるんだろう。

「……はい」
「さんきゅ!陽葵!」

帰って行く二人の後姿は好きで付き合ってるようには見えない。

俺はその姿を見続ける事しかできなかった。





────……
──……

昼の時間、俺が1組の男子と話してた時だった。

4~5人の2年の先輩がきた。先頭には陽葵ちゃんの彼氏。

先輩が来ると自分の彼女を探し、名前を呼ぶ。
普通だったら喜んで彼氏のもと行くものの、陽葵ちゃんは違った。先輩が陽葵ちゃんの名を呼ぶと、陽葵ちゃんは怯えるかのようにして先輩のもとへ行く。

俺には分かる。
陽葵ちゃんは先輩が好きじゃないんだ。

「なぁ、陽葵。金欲しいんだけど」
「……お金ないよ」
「そんな事言わないでさぁー」
「…先輩が使いすぎるから…」

そのやり取りを目の前で見つめる。

「……ちょっとこっちこい。」

人の目を気にしたのか、陽葵ちゃんの腕を掴むと先輩は消えていった。