6.

高校1年の春。
桜が舞う入学式の日。


「滉晴~!お前クラス何組だった?」

そう聞いてくる橋谷泰貴(はしやひろき)は中学で1番仲が良かった友達だ。

「俺2組」
「なんだよ~クラス違うじゃねーか。俺4組だよ」

中学から仲のいい友達と同じ高校だと安心できる。

「そーなんだ」
「なんだよその言い方!さびしーじゃねーか」

興味なさそうに言うが心の中はかなりのショックだ。

「まぁいいや。早く教室行こうぜ」
「ああ」

下駄箱に向かおうとした時だった。
たくさんの新入生がいる中、たった1人だけ目に映った。
髪が肩より少し下まであってサラサラで、すごくかわいい子。桜がとても似合う子だった。


「陽葵ー!私達同じクラスだったよー!」
「ほんと!?やった!」

その子は陽葵と呼ばれていた。

その日から俺は陽葵という子が気になり始めていた。



栗栖陽葵、隣の1組。性格はとても明るい子だった。いつも友達と3人でいて、友達思いの優しい子。
クラスの前を通る時、ついつい足を止めてしまう。

「なんだよお前。また愛しの陽葵ちゃん見てんの?」
「はっ、なんだよその言い方!」

泰貴がからかいにくる。それにムキになる自分がいた。

「そんなムキになんなって!でもさ、あの子は諦めた方がいいぞ?」
「何でだよ」

普通そこは友達として無理だと分かっていても応援するところだろーが。

「あの子、2年に彼氏いるんだよ。入学式の日に告られたんだって」
「そんなの関係ねぇ。奪ってやるよ」
「いやぁ……その先輩はやめとけって」
「はぁ?」
「3年の人達も手つけられないようなやばいヤツだからだよ」
「……お前よくそんな情報知ってるな」
「俺の情報網なめんなよ!……とりあえず、あの子はやめとけ。彼氏さんに目ぇつけられたら痛い目見るぞ」
「そんなの知らねぇよ」

俺は陽葵ちゃんが好きなんだよ。彼氏がいる程度で諦めるか。