我に戻った私は顔をあげた。
さっきと変わらず、暗い空が広がっている。


今の……何だったの?

昔の記憶?私全然知らない。
あれは誰だったの?何を話していたの?

どうして……私の名前を知ってるの?


分からない。分からない、分からない。
今分かっているのは、自分の頬を流れるのは涙だということ。

その涙を消すかのように、雨が降ってきた。それは自分の心を表してるようにも見えて。


今の出来事だけじゃない。思い返せば分からない事ばかりだった。

どうして学校に行かなくなった?
何かが足りないから?それは失ったもの?何を?
どうして私は公園にいたの?
どうして私は泣いているの?

考えれば考えるほど自分が分からなくなる。


私は一体、何を忘れているの?
ねぇ、誰か教えてよ。誰か──








「どうしたの?こんな雨の中で1人」

うずくまってる私の前に、1人の男が現れた。彼はそんな私にいつもみたいに優しい言葉をかけてくれた。
私は、彼の言葉を待っていたのかもしれない。

ううん、待ってたんだ。


「……滉晴」
「雨が降ってるから、遊具の中に行こう」

そう言って滉晴は私の腕を掴んで遊具の中へ連れていったくれた。

遊具の中は天井が低いため、座ることしかできない。私が座ると目の前に滉晴が座った。
狭いということもあって、滉晴との距離も近い。
体育座りをすれば足の先端がくっつく程度だ。

「今日は私服じゃん」

滉晴が雨に濡れた私の服を見て言う。

「そう言う滉晴は制服じゃん」

滉晴はいつもと変わらない制服の姿だった。

「休日でも着てるやつとかいるじゃん」
「まぁそうだけど……」

滉晴の考えてる事は本当によく分からない。謎だ。


「……今日、何でここに来たの?」
「陽葵ちゃんこそ何で来たの?」
「ねぇ、その陽葵ちゃんて言うのやめてよ。前の時はお前とか言ってたくせに」
「あぁごめん、悪気はなかったんだけど。じゃあ陽葵でいい?」
「うん」
「で、陽葵は何で公園に来たの?」
「それ私が先にした質問なんだから、滉晴が先に答えてよ」
「途中で話をずらしておいて何を言う」
「いいから!」


「陽葵がいると思ったから」
「……え」