僕は香恋と楽しく過ごしていた。
 父親が亡くなってから、心に穴が開いたみたいに悲しかった生活が香恋といると幸せな気持ちになっていた。
 今日もいつも通り学校だ。そして教室に行くと。                           
「あ、森中君!香恋知らない?」                          
 クラスメイトの焦った声が聞こえた。                      
「え?知らないけど……何かある?」                        
「いつもならもう学校着いてるし、休むならメールくれるんだけど……」                          
 僕は香恋に連絡を取った。そして数分後、返信がきた。              
 《奏汰、放課後、病院に来てくれる?話したいことがあるの》
 なんだろう……僕は放課後すぐに香恋のいる病院へ向かった。                              
「香恋!」                                  
「お、来た、奏汰やっほー!なにそんなに焦ってるの?」              
「それで、話ってなに?」                           
 奏汰が聞いた瞬間香恋の顔が暗くなった。                     
「えっと、私ね昨日の夜、倒れちゃったらしくて……それで病院に行ったら、病状が悪化してるってお医者さんに言われちゃって」                       
「だから、学校休んだの?」                         
「うん。しばらく入院だって。もう最悪だよ。せっかく奏汰と遊べると思ったのにー!」                                                     
 香恋は力なく笑い、ぷーっと頬を膨らませた。           
「香恋、クラスメイトにはどうやって説明する?」               
「大丈夫。ちゃんと考えたから!」                      
 そう言って香恋はウインクをした。                                        
「ねぇ、香恋は自分の命が……短いってわかっているのになんでそんなに笑顔でいられるの?」                                  
「……本当は凄く怖いの。だけど、私が悲しい顔していたら、私も辛いし、周りの人も悲しい気持ちになるでしょ?だから、私は笑顔でいたい」                    
「やっぱり香恋は凄いな……」                         
 僕はボソッと言った。                             
「何か言った?」                               
「いや、なにもないよ。あのさ、これから学校から帰ってきたら、ここに来てもいい?」                                   
「え⁉いいよ!もちろんじゃん!嬉しい!」                  
「うん。ありがとう。」                           
 それから毎日、学校から帰ってから、すぐに香恋のいる病院に向かった。奏汰は香恋に学校での出来事や他愛ない話をしていた。                            
「うわぁぁん!」                              
 香恋は突然泣き出した。                            
「え⁉どうしたの?」                              
 僕は焦ってしまった。
 どうしたのだろうか。                   
「嫌なの!私、死ぬことが怖いよ‼奏汰やみんなは私よりも長く生きていられる。なのにどうして?どうして私なの?こんなこと言ったって無駄なのはわかるけど、私は!奏汰やみんなと生きていたい!」                    
「……っ⁉」                                 
 僕は前に香恋が言っていたことを思い出した。                
『──私の夢は流星を見ること──』                      
 僕は香恋の夢を叶えたいと思った。