僕は亡くなった父親の遺伝で喘息がある。
 今日は診察があるから早く帰った。病気へ行ったら日記が落ちていた。
 誰のだろう。そう思っていた。
「奏汰?え……なんで奏汰が日記持ってんの?」
 香恋は不思議そうに言った。                             
「えっと、落ちていたから……。この日記って香恋の?」
「うん、そうだよ」
 香恋はなぜか悲しそうに言った。
「見たらいけなかった?」
「ううん。いつか奏汰には言おうと思ってたし、この日記には私の病気のことが書いてあるの」
「え?病気?」
 一瞬、なにを言われたかわからなかった。
 驚きすぎて言葉を失ってしまった。
「うん。私、心臓の病気なの。その日記開いてみてくれる?」                        
 僕は日記を開いた。そこには息を呑むような出来事が書いてあった。                        
《私の心臓の病気は余命1年になってしまった》                             
「……今は余命一年?」                            
「うん。そうだよ……私の心臓の病気は中三の時に部活で走ってたら、急に息苦しさを感じて、病院に行ったら余命一年だって……あ、このこと他の人に言っちゃダメだよ?急だよね、私もびっくりだよ」
 香恋は唇に人差し指を当てた。                                  
「うん……他の人はこのこと知らないの?」                  
「うん。私ね他の人にこのこと言ったらきっと、私がいなくなった時に心配させたり、迷惑かけちゃうから言わないようにしてるの」                    
「そうなんだ……」                                
 僕はどう反応していいかわからずにずっと下を向いていた。
 そんな僕に香恋は少し気まずそうに言った。                  
「あー、心配しなくてもいいよ。今は余命一年だけど学校行けるくらい元気だし。……奏汰がこの話を知っているかはわからないけど……」
「何かあるの?」                               
「えっと、私、去年一ヶ月しか学校に行ってなくて……」              
 その話はクラスメイトが言っていたことだと奏汰は思った。           
「……前にクラスメイトが言ってたのを耳にしたことがあるよ」          
「あ、そうなんだ。じゃあ、もう感づいていると思うけど、私は去年、心臓の病気があったから入院していたの」                       
 香恋が話していることと、前にクラスメイトが言っていたことのつじつまが合った。                
「あ、私もう行くね。また明日」                     
「うん。また明日」