太陽を見送る立夏の切なそうな姿が、酷く胸を苦しめる。
太陽が進んで行くに連れて、立夏がどんどんしおらしくしぼんでいるように見えた。
そんな彼女の姿を見ていられなくて、見ていたくなくて、長月清涼は「ほら、帰ろうぜ」と口にした。
立夏は名残惜しそうに太陽を見てから、小さくため息をこぼす。
「うん。帰ろうか」
二人並んで肩を落としながら、ゆっくりと海沿いの道を歩いて行く。
状況はどうあれ、立夏と二人で歩いているという事実は嬉しかった。
だが、立夏はまるで空っぽになってしまったかのように何も喋らずにただただ歩いていた。
それがたまらなく悲しい。
今、目の前にいるのは自分なのに、彼女の頭には太陽のことしかないのだろうと、太陽しか見ていないのだろうと思うと、胸が痛くて痛くて仕方がなかった。
「明日の夏祭り楽しみだな」
「うん。そうだよね」
少しでも自分を見て欲しくて声をかけてみても、立夏は上の空でほとんど反応を示してくれない。その後も何度か喋りかけたものの、反射のように同じ返答しか返ってこないので、清涼は話すのをやめた。ただ、悲しくなるだけだから。
立夏が今苦しんでいるのはすぐに分かった。
彼女に振り向いて欲しくて、彼女のことばかり瞳で追ってしまうから、嫌という程分かってしまう。
立夏が出している救難信号にいち早く気づけていながら、何もできず、何の力にもなれない自分自身に清涼は腹が立って仕方がなかった。
救難信号を出している相手が自分じゃないから、手を伸ばしたって掴んでくれない。
かつて自分に自信が持てず、人と話すことが苦手だった清涼を引っ張り出してくれたのは立夏だ。
家まで迎えに来てくれて、外の世界に連れ出してくれた。
彼女に見合う人間になれるように、清涼は運動や勉強に全力で取り組んだ。全ては、立夏に振り向いてもらえるようにだ。
だから、彼女が落ち込んで沈んでいる今こそ、その恩返しをするべきだ。
救難信号の相手が自分かどうかなんて、気にするのはもうやめだ。
彼女が清涼を引っ張り出してくれたように、今度は清涼が彼女を深い心の奥底から引き上げる番だ。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
分かれ道に差し掛かると、素っ気なく別れの言葉を口に出し、立夏はとぼとぼ歩いて行った。
先程の立夏のように、彼女が進んで行くにつれて彼女の背中に向かって振る手の動きが小さくなっていく。
立夏の背中が見えなくなってから、清涼は掌を見つめた。
「やっぱり、立夏が助けを求めてる相手は俺にじゃねえよな。俺に助けを求めてるわけじゃない」
ポツリと、小さな声で呟いた。
言ってから、見つめていた掌を力強く握りしめる。
「だけど、そんなのは関係ないよな。立夏の助けが聞こえたなら、俺が彼女を助け出していいはずだ。そのくらいの図々しさがあったってバチは当たらない」
小さく、しかしながら力強く宣言してから、清涼は家へと向かって歩き出した。
太陽が進んで行くに連れて、立夏がどんどんしおらしくしぼんでいるように見えた。
そんな彼女の姿を見ていられなくて、見ていたくなくて、長月清涼は「ほら、帰ろうぜ」と口にした。
立夏は名残惜しそうに太陽を見てから、小さくため息をこぼす。
「うん。帰ろうか」
二人並んで肩を落としながら、ゆっくりと海沿いの道を歩いて行く。
状況はどうあれ、立夏と二人で歩いているという事実は嬉しかった。
だが、立夏はまるで空っぽになってしまったかのように何も喋らずにただただ歩いていた。
それがたまらなく悲しい。
今、目の前にいるのは自分なのに、彼女の頭には太陽のことしかないのだろうと、太陽しか見ていないのだろうと思うと、胸が痛くて痛くて仕方がなかった。
「明日の夏祭り楽しみだな」
「うん。そうだよね」
少しでも自分を見て欲しくて声をかけてみても、立夏は上の空でほとんど反応を示してくれない。その後も何度か喋りかけたものの、反射のように同じ返答しか返ってこないので、清涼は話すのをやめた。ただ、悲しくなるだけだから。
立夏が今苦しんでいるのはすぐに分かった。
彼女に振り向いて欲しくて、彼女のことばかり瞳で追ってしまうから、嫌という程分かってしまう。
立夏が出している救難信号にいち早く気づけていながら、何もできず、何の力にもなれない自分自身に清涼は腹が立って仕方がなかった。
救難信号を出している相手が自分じゃないから、手を伸ばしたって掴んでくれない。
かつて自分に自信が持てず、人と話すことが苦手だった清涼を引っ張り出してくれたのは立夏だ。
家まで迎えに来てくれて、外の世界に連れ出してくれた。
彼女に見合う人間になれるように、清涼は運動や勉強に全力で取り組んだ。全ては、立夏に振り向いてもらえるようにだ。
だから、彼女が落ち込んで沈んでいる今こそ、その恩返しをするべきだ。
救難信号の相手が自分かどうかなんて、気にするのはもうやめだ。
彼女が清涼を引っ張り出してくれたように、今度は清涼が彼女を深い心の奥底から引き上げる番だ。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
分かれ道に差し掛かると、素っ気なく別れの言葉を口に出し、立夏はとぼとぼ歩いて行った。
先程の立夏のように、彼女が進んで行くにつれて彼女の背中に向かって振る手の動きが小さくなっていく。
立夏の背中が見えなくなってから、清涼は掌を見つめた。
「やっぱり、立夏が助けを求めてる相手は俺にじゃねえよな。俺に助けを求めてるわけじゃない」
ポツリと、小さな声で呟いた。
言ってから、見つめていた掌を力強く握りしめる。
「だけど、そんなのは関係ないよな。立夏の助けが聞こえたなら、俺が彼女を助け出していいはずだ。そのくらいの図々しさがあったってバチは当たらない」
小さく、しかしながら力強く宣言してから、清涼は家へと向かって歩き出した。