ベンチに座りながら、僕はなぜ立夏や清涼が僕に構い続けるのかを考えていた。
僕はあからさまに彼らを避けている筈だ。それなのに、彼らは僕を気にかけてくれている。
普通に考えて、とてもいいやつなのは間違い無いだろう。じゃ無ければ、僕みたいなやつはすぐに嫌われてしまうだろうから。
誘うのにあれだけ緊張しているのだ。断られたら傷つくはずなのに、それでも、彼らは辞めようとしない。
そんな風に思考の海に溺れていると、どこかで聞いたことのあるメロディーが駄菓子屋の中から聞こえてきた。
これは立夏の歌声だろうか。店の中でいったい何をやっているんだろうと思って、僕は立ち上がった。
今度のは青井花火の歌声だろうか。鈴を鳴らしたかのような、透き通った美しい歌声をしていた。
昔みんなでやった、ライブごっこを思い出すな。
どうしても気になってしまったので、入り口の陰から中を覗いてみると、青井花火が賞賛されていた。
清涼や立夏が褒めたくなるのも分かる。葉月の歌声とはタイプが違うが、青井花火もとても綺麗な歌声を持っていたからだ。
「じゃ、あとは太陽を誘ったらいいわけだな!」
「一緒にやってくれたらいいんだけどね」
清涼と立夏は、そんなことを言っていた。僕を誘うとは、いったいどういうことだろうか。
一瞬お墓まいりのことかとも思ったが、立夏が『やってくれたら』という言い回しを使っている時点で違うはずだ。どこかに行くという選択肢はない。
きっと、清涼と立夏が、駄菓子屋の音楽を聴いて昔を懐かしんでライブごっこをやったことを思い出したんだろう。
僕だって思い出したんだ。彼らが思い出さないわけがない。
きっとそれで「青井花火に一緒にバンドでも組まない?」とでも言って誘ったんだな。それで、僕も一緒にやって欲しいと思っているんだ。
生憎だが、僕にそんなつもりはない。
「あの……いきなりで悪いんですけど、太陽くんは、どうしてあまり人と関わろうとしないんでしょうか?」
唐突に、青井花火が彼らにそんな質問をぶつけた。心臓が飛び跳ねたのかと疑うほど、一瞬で鼓動が早まった。
本当にびっくりした。どうしたらいきなりそんな質問が出てくるのだろうか。
清涼の答えを聞いて、僕は胸が締め付けられるのが分かった。
痛いな、とても痛い。
僕は葉月が死んで、失うのが怖いと心の扉を閉ざした。
対する清涼と立夏は失いたくないから、そばにいて欲しいから、必死で明るく振る舞って、みんなの輪の中心にいた。少しでも、一緒にいたいからだ。
そして、僕のことも本当に大事に思ってくれているんだろうな。嘘なんかじゃなく、本気で。
同じ事がきっかけでも、考え方次第で歩む道は大きく変わっていくものだと思った。
僕の選んだ道は間違っていたのだろうか。
立夏と清涼のそんな思いを知って、少なからず僕は嫌な気持ちにはならなかった。むしろ、何かが満たされているような感じすらする。
こんな僕でも彼らの守るべき友人の中に入っていることが、嬉しいと感じてしまっている。
嬉しいと感じていることが、狂おしいほどに怖い。あれだけ徹底して避け続けていたっていうのに、少し油断したらこれだ。だからこそ、避け続けていたというのに。
自分では誘いを断っておいて、喜びを感じているなんて勝手なやつだと思う。
この状況で、彼らにバンドをやろうと誘われて、僕は断れるだろうか。
正直言って、分からないな。
彼らとバンドを組んだら、苦しくて仕方なくなることもあるだろう。
それでも少し、彼らの選んだ道を知っておくのも悪くないと思えた。
青井花火と出会って、彼女に触れて、僕は急激に昔に近づいている気がする。
少し前なら、こんな気持ちにはならなかった。
彼女から感じる葉月らしさがどことなく葉月と一緒に居るという気にさせているのだろうか。
青井花火は葉月と似ているはずなのに、不思議と嫌な気持ちにはならない。
まるで、自分の中で青井花火を葉月の代役にしてしまっているかのようだ。なんだかそれは凄く気持ち悪いことのような気がした。
しばらくしてから、清涼達が戻って来た。
そのまま、僕達は青井花火を連れて街の散策へと出かけた。
僕はあからさまに彼らを避けている筈だ。それなのに、彼らは僕を気にかけてくれている。
普通に考えて、とてもいいやつなのは間違い無いだろう。じゃ無ければ、僕みたいなやつはすぐに嫌われてしまうだろうから。
誘うのにあれだけ緊張しているのだ。断られたら傷つくはずなのに、それでも、彼らは辞めようとしない。
そんな風に思考の海に溺れていると、どこかで聞いたことのあるメロディーが駄菓子屋の中から聞こえてきた。
これは立夏の歌声だろうか。店の中でいったい何をやっているんだろうと思って、僕は立ち上がった。
今度のは青井花火の歌声だろうか。鈴を鳴らしたかのような、透き通った美しい歌声をしていた。
昔みんなでやった、ライブごっこを思い出すな。
どうしても気になってしまったので、入り口の陰から中を覗いてみると、青井花火が賞賛されていた。
清涼や立夏が褒めたくなるのも分かる。葉月の歌声とはタイプが違うが、青井花火もとても綺麗な歌声を持っていたからだ。
「じゃ、あとは太陽を誘ったらいいわけだな!」
「一緒にやってくれたらいいんだけどね」
清涼と立夏は、そんなことを言っていた。僕を誘うとは、いったいどういうことだろうか。
一瞬お墓まいりのことかとも思ったが、立夏が『やってくれたら』という言い回しを使っている時点で違うはずだ。どこかに行くという選択肢はない。
きっと、清涼と立夏が、駄菓子屋の音楽を聴いて昔を懐かしんでライブごっこをやったことを思い出したんだろう。
僕だって思い出したんだ。彼らが思い出さないわけがない。
きっとそれで「青井花火に一緒にバンドでも組まない?」とでも言って誘ったんだな。それで、僕も一緒にやって欲しいと思っているんだ。
生憎だが、僕にそんなつもりはない。
「あの……いきなりで悪いんですけど、太陽くんは、どうしてあまり人と関わろうとしないんでしょうか?」
唐突に、青井花火が彼らにそんな質問をぶつけた。心臓が飛び跳ねたのかと疑うほど、一瞬で鼓動が早まった。
本当にびっくりした。どうしたらいきなりそんな質問が出てくるのだろうか。
清涼の答えを聞いて、僕は胸が締め付けられるのが分かった。
痛いな、とても痛い。
僕は葉月が死んで、失うのが怖いと心の扉を閉ざした。
対する清涼と立夏は失いたくないから、そばにいて欲しいから、必死で明るく振る舞って、みんなの輪の中心にいた。少しでも、一緒にいたいからだ。
そして、僕のことも本当に大事に思ってくれているんだろうな。嘘なんかじゃなく、本気で。
同じ事がきっかけでも、考え方次第で歩む道は大きく変わっていくものだと思った。
僕の選んだ道は間違っていたのだろうか。
立夏と清涼のそんな思いを知って、少なからず僕は嫌な気持ちにはならなかった。むしろ、何かが満たされているような感じすらする。
こんな僕でも彼らの守るべき友人の中に入っていることが、嬉しいと感じてしまっている。
嬉しいと感じていることが、狂おしいほどに怖い。あれだけ徹底して避け続けていたっていうのに、少し油断したらこれだ。だからこそ、避け続けていたというのに。
自分では誘いを断っておいて、喜びを感じているなんて勝手なやつだと思う。
この状況で、彼らにバンドをやろうと誘われて、僕は断れるだろうか。
正直言って、分からないな。
彼らとバンドを組んだら、苦しくて仕方なくなることもあるだろう。
それでも少し、彼らの選んだ道を知っておくのも悪くないと思えた。
青井花火と出会って、彼女に触れて、僕は急激に昔に近づいている気がする。
少し前なら、こんな気持ちにはならなかった。
彼女から感じる葉月らしさがどことなく葉月と一緒に居るという気にさせているのだろうか。
青井花火は葉月と似ているはずなのに、不思議と嫌な気持ちにはならない。
まるで、自分の中で青井花火を葉月の代役にしてしまっているかのようだ。なんだかそれは凄く気持ち悪いことのような気がした。
しばらくしてから、清涼達が戻って来た。
そのまま、僕達は青井花火を連れて街の散策へと出かけた。