気がつくと浜辺に立ち尽くしていた。

 隣を向くとそこにはもう二度と会うことができなくなってしまった女の子がこちらを見て笑っている。その笑顔を見て、胸が熱くなった。

「久しぶりだね。太陽は元気にしてた?」

 その声を聞いて、その瞳を見て、その姿を見て、溢れんばかりの思いが色んなところから吹き出す。だけど、それらを抑えて僕は彼女に向き直った。

「うん。久しぶりだね。今までは正直元気だったとは言えないかな。でも、葉月が戻って来てくれたならまた昔みたいに元気にやっていけそうだよ」

 そう言うと、葉月は少しだけ悲しそうな顔をした。

「そうなんだ……」

 なぜそんな顔をするのだろうか。そう考えた途端、物凄い不安に襲われた。僕はまた彼女を傷つけてしまったのだろうか。言わないといけない。あの時はごめんと。彼女に謝らなくてはならない。

「もう行かないといけないんだ」

 そんな僕の思いとは裏腹に、葉月はじゃあねと手を振って歩き出した。

 ダメだ。いかないで。

 今すぐに彼女を追いかけたい。だが、僕の足は重い鉛のように全く動かない。思うように走れない。その間にも葉月はどんどんと砂浜を進んで行ってしまう。

 必死に声を振り絞ろうとするが、声が出ない。

 葉月が行ってしまう。

 彼女が、遠ざかっていく。

 葉月……振り絞った声は、喉の奥でかすれて消えた。

 この声が届くことはきっとない。

 だって彼女はもう、この世にはいないのだから。