その後ぱてまからは
『気が向いたらいつでも連絡してくれなのだよ。』
とだけきていた。心が広い作曲家、らしい。
明くる日も明くる日も、私はぱてまの曲を聴いていた。再生回数はそれぞれの動画でマチマチだったが、どの曲も私にとっては魅力的だった。これを"依存"というのだろうか。
【ピコン】突然スマホが鳴った。
メッセージが届いた音、「里穂」からだった。そういえば何も連絡せず休みっぱなしだから心配してくれているのだろう。
『純恋どうしたの?学校来ないのー?』
さすがに里穂にも、今の状況は話せない。きっと酷く心配するだろうし、家に押し掛けられたら私の秘密がバレる可能性も低くはない。
『風邪気味でさ~、うつさないように休んでる!』
数十秒で返信がくる。この行動からも里穂が私を思ってくれているのが強く伝わってくる。
『それほんと?純恋、聞いても自分のこと何も話してくれないから心配。何かあったら言ってよね。』
勘が鋭いのは、長い付き合いの末だろう。棘の生えた心が癒された気がする。
「(自分のこと...か。)」
私も正直、自分がなんなのか分からないから何も言えない。自分自身がなんのために生きていて、なんのために勉強してなんのために学校に通って...問えば問うほど問題が出てくる。
『ありがとね、里穂!』
スタンプを押して会話を閉じる。里穂はいつでも私の心の支えだ。今回のことを伝えたら、里穂は力になってくれるだろうか、引かずに共に解決策を見つけ出そうとしてくれるだろうか。
なんて、怖くて言い出せもしないくせに。
声の出せないシンガーなんて、それはもうシンガーじゃない。シンガーじゃないなら、私は何...?