『key、歌詞案いくつか浮かんだ?』
『AメロからBメロの形の検討はついたよ。サビが凝りたいからまだ優先しないでおきたいな。』
歌詞にだけ集中しての作業ということで、ぱてまは休暇をとっている。やむと2人きりで着々とストーリーを膨らませる。やむの声はいつも以上に真剣で、私も集中して作業に挑む。
『ふーん、結構いいね。大まかにAメロBメロはこれで仮終了、あとはサビか。』
『どうも思いつかなくて...』
入れたい言葉がない訳では無い。その言葉をどう歌に表現すればいいのか分からない。
『この歌はkeyの歌なんだから、keyが好きなように振っていいのよ?』
『うん、やむならどういう歌詞をつけるの?』
『私ならこのメロディに劈くような雄叫びを文面にして、明るいメロディの裏に怖い意味を...』
忘れてた、相手はやむだ。
『ありがとう、参考にする。』
とだけ送って、今日はもう切り上げることにした。明日で仕上げたいということで私も明日に持ち越しさせてもらうことに。やむは見たいアニメがあるとすぐにボイスチャットを抜けてしまった。私もその後をすぐ追うようにボイスチャットを抜けた。
ブランケットを羽織ってカーテンを開き、夜の匂いを感じながらゆっくりとベランダへと降りる。心做しか街の灯りが前よりも鮮やかに見える気がする。夏でも夜は冷えるようで、ブランケットを羽織っていても首元が寒い。手を擦りほぅと息を吐く。
「純恋!!」
突然私を呼ぶ声が聞こえ、当たりを見回す。下を見ると、玄関先に里穂の姿があった。
「ねぇ、今から少し遊ばない?」
コソッと口元に当てて話す里穂が無邪気で私も嬉しくて、すぐに玄関へと向かった。