今日は作業が連日と続いたので一日休もうということでお休み。学校も長期休暇へと入り、私は完全に暇を持て余した。里穂としょっちゅうメッセージを送り合うものの、やはりどうしても暇を持て余す。
「(お菓子食べたいな...)」
1階に自分から降りたのは何週間ぶりだろう。ご飯は母が部屋まで持ってきてくれていたし、何か必要な用事もなかったため部屋に篭もりっぱなしだった。でも、自ら何かしようとすることが増えたのはこの何週間かで起きた出来事達のお陰だろう。
1階では母がテーブルで何かを見ていた。私は後ろから盗み見、目を凝らした。それは私の成長過程が綴られたアルバムだった。
「あら、純恋!!やだもういたなら言ってよもう~」
だから、声が出ないんだってば。と思いながら呆れ目で母を見つめる。
「何か食べたいの?あ、今3時だからお菓子?」
こくりと頷くと母は"ふふふと笑って準備し始めた。用意しているものはテーブルから見ただけでは分からない。興味本位でアルバムをめくると、最近の私の学校生活の様子の写真もあった。
「(全部私の...?)」
知らなかった、母がこうして私のアルバムを少しずつ作っていたこと。
「純恋って名前、純恋は気に入ってる?」
こくりと頷く。可愛いし、この名前のおかげで初めの自己紹介は失敗したことがない。名前のおかげで第一印象が良かったのもしょっちゅうだ。
「"純"粋に"恋"って書いて純恋。恋するっていうのは、ただ恋い焦がれるってだけじゃなくて魅力を感じるっていう意味も込められてるの。見たもの、思ったこと、全てに純粋に魅力を感じて欲しい。感情の豊かな子に育って欲しいっていう意味が込められててるの。」
初めて知った。小学生の時、宿題で名前の由来を聞かなくちゃいけない授業があった。母に理由を尋ねるのが面倒で、誤魔化して適当に書いて提出した。今、それを酷く後悔している。
「純恋はその通りに育ってくれたよ。私が手を施さなくても1人で立派に育って、仲間に恵まれてるのも知ってる。見たもの全てに感動して、感情持って本当に素敵な女の子に育ってる。だから、純恋なら大丈夫だってお母さんは信じてる。」
私は、母親の偉大さを知らなかった。あたたかく見守る母親を私は今も、この先も誇りに思う。