親父のキャベツを似顔絵に描くとする。
自然と、僕は眼鏡を描く。
なんだったら、大根に眼鏡かけたら親父として認識してしまう。
それぐらい眼鏡の印象が強い。
僕が産まれてからずっと近視か乱視かで眼鏡をかけている。
眼鏡かけないときは、サングラス。
いつも睨んでるからおっかない。
長男の林太郎と三男の僕は目が良い。
母親のレタスに似たんだろう。
だが、次男の三太郎だけ視力が悪い。
まあこれは持病が関係していて、網膜剝離とかだから、どうしようもない。
キャベツの母、つまり僕かしたらおばあちゃんがいつも言う。
「あんたたちはゲームのしすぎで目が悪くなった。でも、お父さんは違う。勉強のしすぎで目が悪くなった」
そう自慢げに息子を語る祖母。
僕は毎回それを聞いて苦笑いしていた。
だって、ゲームは幼少期にキャベツに破壊されたし、僕と林太郎に関しては視力は良い方だ。
キャベツは生まれつき視力が悪いと聞いた。
しかし、本人は眼鏡をコンプレックスに感じているところがあるようだ。
仕事中は眼鏡をするが、プライベートではブランドもののサングラス。
若いころ、まだお袋のレタスと結婚する前。
デートをしていたそうだ。
1960年代、ミニスカートが流行りだして、街中それはそれは、丈の短い女性が多かったという。
もちろん、お袋のレタスも超絶ミニスカを履いていたそうな……。
当時はまだ横断歩道、信号なんかが少なくて、歩道橋が多かったらしい。
キャベツがレタスに言う。
「喫茶店でも行くか?」
「そうね」
二人して、歩道橋を渡ろうとする。
この時、キャベツはお袋に格好良く見られたいのか、眼鏡はかけてない。
そして、階段を登ろうとしたその時だった。
上を登っている若い女性の姿に気づく。
もちろん、ミニスカだ。
それに気がついたキャベツは何を思ったのか、ズボンにしまっていた眼鏡ケースを取り出し、ササッと素早く眼鏡をかける。
「はぁ~」
口を開いて、ボーッと眺めるらしい。
隣りにミニスカのパートナーがいるのにだ。
お袋が言うには、こんなことが毎回だったそうだ。
「だったら最初から眼鏡しとけよ」
「私が隣りにいるのによ!?」
そう僕に訴える。
だから、僕はいつもおばあちゃんが言う
「勉強のしすぎて目が悪くなった」
という言葉に違和感を感じる。
ああ、理不尽……。