「ルリア……だって!?」
セシリアの母親が口にした聖女ルリアの名を聞いて俺は驚いた。
「ええ、やはりご存じで?」
「あいつは俺の実の妹で、唯一の家族です」
「ソキウス様の妹さん!?」
「あらあら……」
聖女ルリアが俺の実の妹だと答えると、セシリアは驚き、母親の方も驚きの表情をしながら、冷静になろうと振る舞っていた。
「そのルリアが何か?」
「実は4日前に突然、領主である夫の家の前に転移してきました」
「転移?」
「はい。 ただ事ではないという事で、夫が彼女を保護し、真相を聞いたのです」
転移でここにダイレクトに来れるのだろうか?
確かに聖女は、転移魔法『テレポート』を使えるが、あくまで緊急の為の転移魔法なので、場所は指定できなかったはずだ。
「まず、ルリア様は女神様のお告げと助力でこの『ザッハトルテ』に転移してきたようです。 女神様が勇者様の因子を発見したのでしょう」
「あ……」
母親から聞いた内容で、俺は思い出した。 聖女のもう一つの『顔』を。
それは女神様にコンタクトを取る『連絡者』としての役割を持っていた。
だから、緊急用の転移魔法でも女神様の力でダイレクトにここに来れたんだろう。
特に妹のルリアは、女神様の声を孤児院に引き取られた時から聞き取ることが出来たらしいので、勇者選定の権利を持つアグリアス王国が俺を勇者に任命すると同時にルリアも聖女に任命された。
俺の行動は、俺の意志も大半だが女神経由でルリアからの勧めでもあった。 だが、それを魔王討伐だけを優先すべきという賢者のシュルツや戦士のエレンは批判していた。
女神様の勧めで人助けした時もそうだったが、あいつらは反女神派なのだろうか?
色々と考えていたが、続きが気になるので、母親の話に再度耳を傾ける。
「保護された後で、聞いた話ではまず、気を失っている時に、念話で勇者様であったあなたが賢者と戦士に崖に突き落とされた事と、あなたの鬼籍入りを女神様から知らされたのです」
シュルツによって気絶させられたルリアは、気絶している間は常時念話魔法を発動した状態になっていたのか。
女神様から知らされた内容は、ルリアとて気が気じゃなかったはずだ。
「女神様の力のおかげで意識を取り戻したルリア様は、まず転移でアグリアスの王族に伝えました」
「ルリアが……。 しかし、俺は鬼籍入りされているんだけど」
「そうです。 賢者のシュルツはどうやら王族を欺いて新たな勇者選定をさせるように動いていたみたいです」
「なんだって!?」
「向こうではあなたやルリア様は平民生まれだったのですよね? そんな人物が勇者に選ばれるのが不快だったようですね」
根っからの貴族主義だったのか。
そりゃあ相容れないはずだ。 あの手の貴族は自分本位だから、他人が困っていようとも見捨てる事こそ至高なのだろう。
だが、それを抜きにしても何故、安易に俺の鬼籍入りを許可したのだろうか?
「あそこは王族のいずれかの一人が、サインをすれば鬼籍入りが完了するようです。 どうも王族の中にシュルツとつるんでいた人物がいたことが発覚。 除籍かつ追放処分になったそうです」
「王族にも俺が勇者なのを嫌っているのがいたのか」
「鬼籍入りの件だけではないのです。 追放した王族……、つまり第一王子だった者ですが、書類を改ざんしてシュルツとエレンを加えさせるようにしていたそうです。 本来では別の方が勇者パーティに入る予定でした」
「マジか……。 というかそこまでして俺を……?」
「そのようです。 そして、ルリア様は女神の声を聴くという事でその仕組みの実験台にするつもりだったのでしょう」
あいつがあの時に使い道があるといったのはそういう意味か。
思い出しただけで腹が立ってきた。
「そのルリア様からの告発で、他の王族や国王は一斉に調査を行った結果、シュルツとエレンが第一王子や大臣と結託して改ざんなどを行っていたことが判明。 さっき言ったように第一王子は除籍勝つ追放処分でその際に何も持たせないまま追い出したそうです。 大臣やシュルツ、エレンは現在牢屋に放り込まれています」
「あいつらは牢屋か。 だけど、脱出の可能性があるのでは?」
「一応、女神の結界を掛けて脱出はしないようにしているみたいですが……、シュルツがルリア様を気絶魔法で気絶させたのであるなら可能性としてありえるかもしれませんね。 本来、聖女は気絶魔法などの異常系は効きませんから」
聖女にはそういう仕組みがあったのか。 基本は女神様の巫女みたいなものだから。
それを無視して気絶させたのなら、やはり反女神派なんだろうな、あいつらは。
「そして、その後はルリア様は女神様の導きでここに転移で来たようです」
そういうわけか。
何にしてもルリアが無事だった事は、女神様に感謝しないとな。
「それで、ルリアには会えますか?」
「大丈夫ですよ。 ついでに改名などの手続きを行うついでに会いに行けますから」
「ありがとうございます。 今から会いに行っても?」
「いいですよ。 娘たちも連れてですが……」
「構いません。 フィンランちゃんも懐いてくれてますし」
「それでは、準備をして私の夫の所に……この町の役所の機能をも持つ辺境伯の家に行きましょう。 セシリア、フィンランも準備しなさい」
「はい」
「あーい」
セシリアもフィンランちゃんも元気に返事をして、部屋を出ていく。
母親も『では、準備が終えたら玄関に』と言いながら部屋を出て行った。
ルリアが生きていて、会えるという事に心を躍らせながら、俺は着替えなどの準備をし始めるのだった。
セシリアの母親が口にした聖女ルリアの名を聞いて俺は驚いた。
「ええ、やはりご存じで?」
「あいつは俺の実の妹で、唯一の家族です」
「ソキウス様の妹さん!?」
「あらあら……」
聖女ルリアが俺の実の妹だと答えると、セシリアは驚き、母親の方も驚きの表情をしながら、冷静になろうと振る舞っていた。
「そのルリアが何か?」
「実は4日前に突然、領主である夫の家の前に転移してきました」
「転移?」
「はい。 ただ事ではないという事で、夫が彼女を保護し、真相を聞いたのです」
転移でここにダイレクトに来れるのだろうか?
確かに聖女は、転移魔法『テレポート』を使えるが、あくまで緊急の為の転移魔法なので、場所は指定できなかったはずだ。
「まず、ルリア様は女神様のお告げと助力でこの『ザッハトルテ』に転移してきたようです。 女神様が勇者様の因子を発見したのでしょう」
「あ……」
母親から聞いた内容で、俺は思い出した。 聖女のもう一つの『顔』を。
それは女神様にコンタクトを取る『連絡者』としての役割を持っていた。
だから、緊急用の転移魔法でも女神様の力でダイレクトにここに来れたんだろう。
特に妹のルリアは、女神様の声を孤児院に引き取られた時から聞き取ることが出来たらしいので、勇者選定の権利を持つアグリアス王国が俺を勇者に任命すると同時にルリアも聖女に任命された。
俺の行動は、俺の意志も大半だが女神経由でルリアからの勧めでもあった。 だが、それを魔王討伐だけを優先すべきという賢者のシュルツや戦士のエレンは批判していた。
女神様の勧めで人助けした時もそうだったが、あいつらは反女神派なのだろうか?
色々と考えていたが、続きが気になるので、母親の話に再度耳を傾ける。
「保護された後で、聞いた話ではまず、気を失っている時に、念話で勇者様であったあなたが賢者と戦士に崖に突き落とされた事と、あなたの鬼籍入りを女神様から知らされたのです」
シュルツによって気絶させられたルリアは、気絶している間は常時念話魔法を発動した状態になっていたのか。
女神様から知らされた内容は、ルリアとて気が気じゃなかったはずだ。
「女神様の力のおかげで意識を取り戻したルリア様は、まず転移でアグリアスの王族に伝えました」
「ルリアが……。 しかし、俺は鬼籍入りされているんだけど」
「そうです。 賢者のシュルツはどうやら王族を欺いて新たな勇者選定をさせるように動いていたみたいです」
「なんだって!?」
「向こうではあなたやルリア様は平民生まれだったのですよね? そんな人物が勇者に選ばれるのが不快だったようですね」
根っからの貴族主義だったのか。
そりゃあ相容れないはずだ。 あの手の貴族は自分本位だから、他人が困っていようとも見捨てる事こそ至高なのだろう。
だが、それを抜きにしても何故、安易に俺の鬼籍入りを許可したのだろうか?
「あそこは王族のいずれかの一人が、サインをすれば鬼籍入りが完了するようです。 どうも王族の中にシュルツとつるんでいた人物がいたことが発覚。 除籍かつ追放処分になったそうです」
「王族にも俺が勇者なのを嫌っているのがいたのか」
「鬼籍入りの件だけではないのです。 追放した王族……、つまり第一王子だった者ですが、書類を改ざんしてシュルツとエレンを加えさせるようにしていたそうです。 本来では別の方が勇者パーティに入る予定でした」
「マジか……。 というかそこまでして俺を……?」
「そのようです。 そして、ルリア様は女神の声を聴くという事でその仕組みの実験台にするつもりだったのでしょう」
あいつがあの時に使い道があるといったのはそういう意味か。
思い出しただけで腹が立ってきた。
「そのルリア様からの告発で、他の王族や国王は一斉に調査を行った結果、シュルツとエレンが第一王子や大臣と結託して改ざんなどを行っていたことが判明。 さっき言ったように第一王子は除籍勝つ追放処分でその際に何も持たせないまま追い出したそうです。 大臣やシュルツ、エレンは現在牢屋に放り込まれています」
「あいつらは牢屋か。 だけど、脱出の可能性があるのでは?」
「一応、女神の結界を掛けて脱出はしないようにしているみたいですが……、シュルツがルリア様を気絶魔法で気絶させたのであるなら可能性としてありえるかもしれませんね。 本来、聖女は気絶魔法などの異常系は効きませんから」
聖女にはそういう仕組みがあったのか。 基本は女神様の巫女みたいなものだから。
それを無視して気絶させたのなら、やはり反女神派なんだろうな、あいつらは。
「そして、その後はルリア様は女神様の導きでここに転移で来たようです」
そういうわけか。
何にしてもルリアが無事だった事は、女神様に感謝しないとな。
「それで、ルリアには会えますか?」
「大丈夫ですよ。 ついでに改名などの手続きを行うついでに会いに行けますから」
「ありがとうございます。 今から会いに行っても?」
「いいですよ。 娘たちも連れてですが……」
「構いません。 フィンランちゃんも懐いてくれてますし」
「それでは、準備をして私の夫の所に……この町の役所の機能をも持つ辺境伯の家に行きましょう。 セシリア、フィンランも準備しなさい」
「はい」
「あーい」
セシリアもフィンランちゃんも元気に返事をして、部屋を出ていく。
母親も『では、準備が終えたら玄関に』と言いながら部屋を出て行った。
ルリアが生きていて、会えるという事に心を躍らせながら、俺は着替えなどの準備をし始めるのだった。