「ええ、おかげさまで」

「それは良かったです。 命の輝きはありましたが二週間程意識がなかったので……」

(二週間も意識を失っていたのか)

 二人の母親から聞いた話だと、どうやら俺は二週間は意識がないままだったらしい。
 シュルツに崖から落とされて、ここに流されてきた時期を含めてそれ以上は意識を失っていた事になるな。
 そう考えてる俺に向けて、母親がある話をし始める。
 おそらく、向こうでの俺の扱いだろうが……。

「さて、ソキウス様。 かなり残念な話ですが、あなたは向こうの国では死亡したとされています」

「やはりですか……」

 大方の予想通りだった。
 シュルツやエレンの事だ。 必ずあらゆる理由をつけて、俺が死んだという報告をするだろうな。
 そして、新たな勇者を選定してシュルツの思うままの人形として作り上げるのだろう。
 妹のルリアと共に。

「驚かれませんでしたね」

「だいたいの予想はついていましたから」

「ソキウス様……」

「にーに……」

 母親の隣にいたセシリアとフィンランちゃんも悲しそうな表情をする。 特にフィンランちゃんは泣きそうだ。

「フィンランちゃん、おいで」

 俺がフィンランちゃんを呼ぶと、素直にこっちに来てくれる。
 そして、フィンランちゃんの頭を優しく撫でながら、俺はこう言った。

「お兄ちゃん、少しショックを受けたけど、大丈夫だからね」

「んみゅ……」

「本当に大丈夫なのですか?」

「ああ。 これを機に名前を変えて新たな生活を目指そうかと思っているよ」

 妹のルリアの事は心配だが、死人扱いの俺が今行った所で厄介なトラブルを生む。
 なのでひとまずは、裏切られた二人の事は忘れ、名前を変えて新たな生活を目指していこうと告げた。

「その事なのですが、提案があります」

「提案?」

 セシリアの母親から俺に提案があるのだそうだ。
 名前を変えて新たな生活を目指すのにいい案があるのだろうか?

「これは辺境伯である夫からの提案でもありますが、娘であるのセシリアの婿養子としてあなたを家族に迎え入れようと二週間かけて考えたのです」

「家族? 婿養子? セシリアの……!?」

「お母さん!!」

 俺をセシリアの婿養子にするという提案を聞いたセシリアが赤くなっていた。
 流石に恥ずかしいのだろう。