「ふぅ、今日もピクニック日和ですね」

「たしかに、一昨日の雨が嘘のようだ」

「じゃあ、ここでお弁当にしましょうか~」

「わーい♪」

 私はセシリア・アルテミシオン。
 クレストリア王国の辺境に構えるアルテミシオン領の領主の娘です。
 今日は、妹のフィンランと両親と共に近場の川沿いでピクニックをしていました。
 せせらぎの音を聞きながら母の作った弁当で舌鼓を打っていたその時でした。

「あら?」

「どうした、セシリア?」

「あそこに何かが光ってませんか?」

「そういえば、向こう側からこっちに流れてきているわねぇ」

 川の向こう側からこっちに向かって、光が近づいてきている事に気付きました。
 私が気付いた後で、両親も気付いたようで、気になったようです。

「ねーね、あれ!」

「え、人!?」

「フィオナ! 魔法でこっちに引き揚げてくれ!!」

「任せて!」

 フィンランが光に包まれている何かに気付き、私に声を掛けました。
 その光の中にはぐったりとした様子で人間が流されていたのです。
 おそらく男性でしょうか……?

 普通なら溺死しているのですが、光の膜のおかげで辛うじて生きている状態です。
 父が母に魔法でその人を引き揚げるように頼み、母はそれに応えるべく、魔法でこっちに引き揚げました。

「酷い……、ボロボロじゃない」

「生きてはいるが……衰弱している。 家に運ぼう」

「分かりました。 フィンもいいかな?」

「うん!」

 丁度弁当を食べ終えたため、フィンランはぐずることなく素直に理解を示してくれました。
 父が男性を背負って、母が転移魔法の準備をしだしました。
 治療が出来る道具は家に置いたままなので、そこで治療するつもりなのでしょう。
 回復魔法は、『聖女』しか使えませんからね。

「セシリアとフィンランはしっかり捕まっててね。 『テレポート』!!」

 母は転移魔法を発動し、光に包まれました。
 そして、一瞬で我が家の玄関に着きました。

 突然現れて驚くメイドさんに事情を話し、すぐに部屋に運び、手当てを行いました。

 そして、私は知ることになるのです。
 救出した男性こそ、勇者だった方で仲間に裏切られた事を。
 さらには、その仲間が反女神の思想を持っていた事に……。