俺はソキウス。
 平民の生まれでありながら、この世界『フィーリウス』を管理する女神様である『フィーリア』によって勇者として選ばれた。
 その目的は、新たに現れた魔王を倒すというもの。
 さらに、妹のルリアが聖女として選ばれた。
 俺は、アグリアス王国で他の仲間と共に魔王を倒す旅に出たのだが、その仲間とはどうも反りが合わず、衝突を繰り返していた。
 そして、決定的な分岐点が今、訪れようとしていたのだった。


「お前……、ルリアに何を……」

「貴様の妹だからな。 気絶させてもらったよ。 後で人形にしておくつもりさ。 何せ聖女は使い道があるからな」

 妹であり、『聖女』だったルリアを『賢者』のシュルツが気絶させた。
 俺達は、ここ『ガイストガストの岬』で、魔王四天王の水のウォルネルを討ち取ったのだが、その直後、この事態が起きた。
 エレンがどうもルリアの背後を狙って、締め落としたようだ。
 そして、俺はシュルツと戦士のエレンと対峙をしていた。

「我々は魔王討伐のために、寄り道をする貴様が邪魔なんだよ。 よく賢者の私と口論してくれたもんだよ」

「困っている人々を救うことの何が悪いんだ!?」

「私はそれが気に食わないのだ。 速攻で魔王を倒せばいいものを」

「そうさ、魔王さえ倒せば人々は救われるんだから、人助けなんて必要ないじゃん」

「聖剣の発動条件がの一つが人助けなんだけどな。 それを聞いてないお前らじゃないだろう」

「だから、魔王さえ倒せば人助けになるんだから必要ないんだよ!」

 だめだ……!
 シュルツも戦士のエレンも自分の事しか考えていない……!
 聖剣が発動しなければ魔王を倒せないのに何を言ってるんだ、こいつらは。
 まさか、こいつらは……!?

「長話が過ぎたな。 ここが貴様の墓場になる」

「シュルツ……!!」

「もう、魔王退治に貴様は不要だ……! 死ね、ソキウス」

 そしてシュルツの魔法が広い範囲で俺を襲う。 崖に追い詰められているので、避けられず直撃してしまう。

「う、うわあぁぁぁぁぁっ!!」

「ははは、あの世で悔いながら見届けるんだな、ソキウスーーー!!」

 落ちていく俺を見下しながら、狂ったような雄たけびを上げるシュルツを見たのを最後に、俺はそのまま意識を失ったのだ。

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