帰る時間になった。

「あ、ずっと渡しそびれていたの」

 そう言うと、私は鞄の中からピンクのリボンがついている花柄の、小さな袋を取り出して渡した。

「何?」

 玲奈はすぐ、丁寧にその袋を開けた。

「ブレスレット、プレゼントだよ!」

 ずっと、買ってから鞄に入れっぱなしだったサージカルステンレスの、シンプルなデザインのピンクゴールド色ブレスレット。玲奈へのプレゼントを、やっと渡せた。

「……」

 玲奈は無表情でそのブレスレットを見つめていた。

 えっ? 何? 気に入らなかった?

「ありがとうございます」

 お礼を言った瞬間、玲奈の目が潤いに満たされると、一気に涙が溢れてきた。

「何で泣くの? 何でいきなり敬語?」

「うれしくて……」

 涙声で、やっと聞き取れるくらいの声で玲奈はそう言った。

「そんなにブレスレット欲しかったの?」

「プレゼントも嬉しいけど、また優菜とこうやって話せてだよ」

……。

 私もつられて涙が溢れてきた。ふたりでいっぱい泣いた。そして玲奈を強く抱きしめた。

 ――私は玲奈のこと、大好きなんだなと改めて思った。