渉のお母さんから何度も謝られた。
段々変わっていく渉にお母さんも辛いだろうに……

最初は私も渉に寄り添ってあげたいと思っていたけど、渉からの暴力に耐えられなくなった。
そんな私に渉のお母さんから別れて離れたほうがいいと言われた。
ただ、はっきりと別れの言葉を伝えてほしいともお願いされ今日ここに来たのだ。


「ゆうっかっ……」

力が抜けたような声を出して、私に触ろうとする。
栞衣奈がその手を払った。

「優歌に触らないで」
「うるさい……うるさい!!」

栞衣奈を押して、無理やりどかすと下を見ている私の肩を持つ。

「きゃっ……!!」

栞衣奈の小さな悲鳴。

「嘘だろ!!優歌」

揺さぶられるのにも動じず、床に視線をやったまま。

「優歌ッ……」

頬に触れようとした手を私は、払った。触って欲しくない。

その時、初めて渉の目を見た。
悲しみと怒りと、様々な感情が混ざっているのがわかる。

「私に、触らないで」

振り払うと、栞衣奈に近付く。

「大丈夫?栞衣奈」
「うん、平気」

わたしの手を借りて、栞衣奈が立ち上がる。

「そんな女なんか、どうでもいいじゃないか!!!!」
「栞衣奈に手を出したら、許さないって言ったはずよ」

突き放すように、冷たく答えた。
そして、部屋を出る。

「行かないでっ……優歌っ……」
「渉」

最後に振りかえって。
涙をこぼしながらも、はっきりと言った。


「バイバイ」

好きだった。
でも、弱くてごめんね。耐えられないんだ。

私は、渉との関係に終止符を打った。