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春の暖かな日だまりが心地よい。
空も青々としていて、雲がゆっくりと流れていた。
「あれ、優歌ちゃん?」
「律玖さん!」
屋上にいると、律玖さんが後から来た。
栞衣奈が委員で、この放課はいなかったので一人で屋上にいた。
律玖さんも一人らしく、私の隣に来て手すりに手をかける。
「屋上に来るなんて、珍しいんじゃないですか?しかも、一人で」
「そう言う、優歌ちゃんも。俺は、屋上が温かいから、日向ぼっこしに来ただけ」
隣から律玖さんの横顔を見る。
かっこいいの一言では、表わせない。
また、胸が高鳴る。
──とくん、とくん。
「ん?俺の顔がどうかした?」
「いえ!?何でもっ……律玖さん、よく屋上に来るんですか?」
「よくってほどは来ないけど、来るね。
気持ちいいし、落ち着く。ま、昼は混むから来ないけど」
小さく笑うと、ごろんと寝転がった。
「律玖さん!?」
「気持ちいいよ、優歌ちゃんもどう?」
「えっ、でも……」
制服の事を気にしていると、律玖さんは起き上がり、上着を脱いだ。
そして、自分が寝転がっている隣に敷く。
「こうすればいいよね?」
「律玖さんのが汚れちゃいますよ!」
「いいんだって。……寝てみ?」
ポンポンと上着を敷いた所をたたく。
「わかりました、じゃあ……」
座ってから寝転がる。
太陽の光がまぶしい。でも、温かい。
「気持ちいい」
思わず声に出していた。
「でしょ?こうしていると空も見えるし……好きなんだよね」
静かな時間(とき)が流れる。
「──いいですね、こうやってみるのも」
そう言って微笑むと、律玖さんは頷いた。
──キ―ンコーン
予鈴のベルの音が聞こえてきた。
慌てて立ち上がり、上着を軽くはたくと律玖さんに返す。
「ありがとうございました」
「うん。戻ろっか、もう少しいたいけど」
名残惜しそうに言うと立ち上がり上着を受け取った律玖さんに礼をして屋上を後にした。